「自立語内部の切れ続き」  点字は、語の区切り目を明らかにするために分かち書きを行います。日本語の文の単位は、自立語または独立語に助詞や助動詞を添えたものからなって、一般に「文節」と呼ばれています。  自立語はひとつの単語で1文節を作ることができ、それだけで意味がわかりますが、付属語(助詞、助動詞)は自立語と一緒でなければ文節を作ることができない単語です。  点字の分かち書きの「第1原則」は、墨字の小学校低学年の教科書の「文節わかちがき」とほぼ等しいものです。  ところが、区切り目と区切り目の間が長すぎると読みにくいため、語の構成要素で区切ること、「第2原則」が必要になります。しかし、分かち書きの第1原則と区別するため、「切れ続き」と呼んでいます。 1.「する」について  「名詞・副詞+する」は区切る。    生活□する  得□する  恋□する  はっきり□する  スト□する  促音化や撥音化などの音韻変化したり、連濁した場合は続ける。    接する 達する    軽んずる 先んずる    応ずる 論ずる  自立性の弱い「1字漢語+する」は一体化しているので続ける。    関する  有する  対する   (「を」を入れることができる場合は1マスあけ、入らない場合は続けると   いうことを目安にする)  サ変のほかに、5段の活用がある語は続ける    愛する  適する  略する 2.複合名詞の切れ続き (1)「3拍以上の意味のまとまりが2つ以上ある場合、その境目で区切る。2  字漢語は、2拍であっても3拍以上の意味のまとまりと同様に扱う」 (2)2字2拍の漢字と3拍以上の語が結びついているとき、原則として2字2  拍の和語は続け、漢語は区切ると考える。和語の場合3拍以上(山登り、建  物ーたてもの)にならないと区切る成分にはならない。      部屋探し  土地□探し  車□井戸  車□椅子  風呂□あがり     (漢語=味噌、胡麻、土地、椅子、風呂、)     (和語=部屋、井戸、野良、屋根、仮名) (3)和語と漢語の混種語は、漢語と考える。    場所(「場」は和語、「所」は漢語) 遊び□場所  春場所 (4)3拍以上の意味のまとまりがあれば区切るが、2拍の外来語の場合、相手  によって区切っていく。2拍+3拍は、続ける。      ミニバイク  フルコース  テレマーク  キーボード          シフトキー  オルトキー (5)2拍+5拍は、全体に長くなるので、区切る。      クリスマス□イブ  クーリング□オフ  コントロール□キー       マス□コミュニケーション  ミニ□コンサート   2拍+4拍は、どちらとも言えないようである。  (6)接辞や接辞的に使われている「セミ、ニュー、ハイ、ミニ、フル」など2  拍の語も、日本語の単語として自立しているかどうかを考えます。「ニュー、  ハイ、ミニ、フル」などは自立語として考えて良い。例えば、「ハイな気   分」「フルに活用」のように使っている。    しかし、「セミ、モノ、ユニ」など、使われ方がまだなじんでいないので、  続けて良い。      セミファイナル  ニュー□モラトリアム     ハイ□ソサエティ (7)外来語を含む混種語(外来語+漢語・和語)の場合は、相手が漢語・和語  の自立可能な意味の成分(漢語は2字2拍以上、和語は3拍以上)であれば、  2拍の外来語は区切って書いて良い。   「意味の理解を助ける場合」とただし書きがあり、「カー、マン、デー」  などは後ろについた場合は続けて書いた方がよい。これは「外来語+外来   語」の場合も同じ。 宣伝カー  特売デー  感謝デー  銀行マン   オープンカー  ワンマンカー  メモリアルデー  ビジネスマン     (8)二つ以上の自立可能な意味の成分からなる繰り返し言葉は、区切って書き  表すことを原則とする。    別れ□別れ  思い□思い  おそる□おそる   擬声語、擬態語の場合も2拍以下の繰り返し言葉は続け、3拍以上は区切  る。 グデン□グデン  うつら□うつら   フーフー  キョロキョロ  ヒラヒラ  バタバタバタ    区切ると意味の理解を損なう場合は続けて書く。   @ 繰り返すことによって、新たな意味が生じる語      もうあきあきだ  生き生きした顔  いけいけの人            いちいち文句を言う 手に手に  なかなか  のびのび         つらつら  しばしば  いろいろ   A 漢字で書き表すときに踊り字を用いることが一般的な複合語      赤々  後々  誰々  数々  元々  家々   B 赤ちゃんに対して話しかけるような語 かみかみ  なでなで  ふきふき  まぜまぜ   C 繰り返し言葉が他の語と複合語を作っている場合      オレオレ□詐欺  あるある□大事典  津々□浦々            押せ押せ□ムード  駄目駄目□人間  てるてる□坊主          とくとく□情報       @〜Cに当てはまらない繰り返し言葉は区切って書く。この場合の判断   としては、「よく□よく□考えて□みれば」と「よくよくの□ことだ」を   例にとると、「よく考えてみれば」を強調して「よくよく」となった場合   で区切り、あとの場合は、「よくのことだ」では意味が通じないので、続   けると考える。      いや□いや□そう□簡単では□ない  行きは□よい□よい      いえ□いえ□どう□いたしまして おや□おや□また□会いました         なお、「そもそも、もしもし、ゆめゆめ」は単独では用いないので続け   て書く。 3. 固有名詞の切れ続き    原則として自立語内部の切れ続きの場合と同じに考える。    ただし、固有名詞の内部および固有名詞と普通名詞や接尾語との間では、自 立可能な意味の成分と副次的な意味の成分に、多少独特の性質があるので、そ の点を配慮する必要がある。 (1)人名の後ろに敬称・尊称・官位などが続く場合、3拍以上であればその境  目で区切り、2拍以下の副次的な意味の成分であれば、前に続けて書き表す  ことを原則とする。     福沢□諭吉□先生  渋沢□男爵  大海人□皇子  春日の□局     生田流  芥川賞   2拍以下であっても、自立可能な意味の成分であれば、前を区切って書き表 す。     正岡□子規□記  空海□書 愛子□叔母 鈴木□アナ 志貴の□皇子 (2)地名や地名と普通名詞・造素用語・接尾語などで構成される普通名詞は、  段階毎に区切って書き表す。1つの段階の内部に自立可能な意味の成分が2  つ以上あれば境目で区切り、2拍以下の副次的な意味の成文はどちらかに続  けて書くことを原則とする。     大和□郡山 土佐□清水市  泉□佐野市 紀伊□田辺駅 華厳の□滝 難波の□宮      和歌山□県庁  和歌山港  「日本点字表記法 2001年版」の改定骨子 1.限られたところでしか使用しなかった符号類について、墨字と点字の対応  の必要性が強くなっていることから、これまで付加記号とされていた特殊音  や符号が一般に用いてよいとの扱いになる。(畳語、行末つなぎ符が削除)   伏せ字・マーク類の符号    伏せ字 : ○Pu △Pw □P} ×P@(数字の伏せ字にも使用)           その他P~ マーク類 : %pO &po #(ナンバーマーク)pi *(アステリスク)pa    特殊音 : ヴヨ フヨ ズイ スイ グオ グエ グイ ヒユ ニエ キエ 2.「古文の点字表記」、「漢文の点字表記」の位置づけ。 3.自立語内部の切れ続きの原則としての「自立可能な意味の成分と副次的な意 味の成分および拍数との関係」を明確にする。 4.動詞・代動詞と関連づけて、サ行変格活用の複合動詞と呼ばれている「す  る」については、原則として区切り、例外として続ける場合を明示する。 5.固有名詞の切れ続きについては、自立語内部の切れ続きの原則に固有名詞の 特性を加味して作成する。 6.外字符、外国語引用符などの用法を明確にする。なお関連として、Eメ−ル やホ−ムペ−ジなどの表記を情報処理用点字の囲み符号で表すとともに、「情 報処理用点字表記」を掲載。 7.点字化の配慮における中点とルビの扱いについては、原則的な考え方を整理 してまとめる。