白い杖 第25号


和歌山市視覚障害者福祉協会機関誌「白い杖」

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 巻頭言
   会長 北山豊
 卯月の空をピンクに染めて、桜前線にのり花だよりが盛んです。
 会員の皆様、お元気にお過ごしでしょうか。さて、四月一日から和歌山市も中核都市として新しいスタートを切りました。私たちもこの新生和歌山市に大きな期待をかけたいと思いますが、一番影響を受けるといわれる福祉施策が、どう進展するのか、まず注目して行きたいと思います。
 ところで、先の阪神淡路大震災の二周年にあたって被災者に対し、「今、一番欲しいものはなんですか」とアンケート調査をしたところ、第一位には金でも物品でもなく、人と人のつながりが欲しいと言う感想が一番多かったそうです。
 本会においても急速なる高齢化等により、会員数の減少が目立ってまいりました。
 今こそ、私たち会員は、お互いの心と心を結び合い大磐石の備えをもって、本会のさらなる団結と発展を図らなければならないと思います。
 中核都市のスタートが、和歌山市に在住する視覚障害者の福祉に大きなプラスになるのか、又、マイナス面につながるのか、今こそ本会の力量にかかっていると言っても過言ではないでしょう。
 私は、平成九年度の本会の目標を「結び合う、心でのばせ我が福祉」をスローガンにしたいと思います。会員各位の尚一層のご支援・ご協力をお願いして、巻頭言といたします。

和視協平成八年度事業実施報告
   書記 北口豊
会議
執行部会 四回。理事会 三回。
市連盟理事会 四回。同代議員会 一回。
連絡 文書九回。電話 数回。その他 若干。
四月八日 定期総会、県総合福祉会館四F大会議室、
       七年度の事業および決算の承認、八年度の事       業計画と予算案の承認、役員改選など重要案       件を処理の後、会長北山豊・副会長山崎景生       ・副会長宮本克二・会計北山和代・書記北口       豊の新役員で始動。
五月五日 市身連代議員会、市ふれあいセンター、新年       度の事業計画の具体化の決議と新役員の選出。
六月十六日 点字競技会、県総合福祉会館四F大会議室、       三十五名出席、め書きリレー、尻取り書き、       マジカルチェンジの三種目で競い合う。
七月七日 福祉学習会、市ふれあいセンター、三十余名       出席、日ごろ思うことを出し合い、今後の会       の進むべき方向の参考にすることを目的に会       員から十七題の貴重な意見が出される。
八月十一日 県盲協点字協議会、有田郡広川町町民会館、       九名出席、日盲連主催の全国大会の予選を兼       ねて写し書き、聞き書き、速読みの三競技と、       ボランティア等を対象にめ書きなどで競い合       い、本会からは山崎芳子さんが出場権を獲得。
  十八日 市身連主催将棋大会、市ふれあいセンター、       七名出席、肢体・聴覚・視覚の各部会から精       鋭が集いトーナメント制で力を競った。
九月十五日 市身連理事会、市ふれあいセンター、各部会       から要望事項を持ち寄り、市側と交渉を持つ。       本会からは次の三点の検討を市側に要望した。
       一 ガイドヘルパーの利用範囲の拡大と手続         きの簡素化について
       二 駅やデパートの館内の点字案内板の設置         について
       三 一般ごみおよび粗大ごみ収集手続きの簡         素化について
十月十三日 県盲協主催俳句大会、田辺市市民総合センタ       ー、十名出席、あらかじめ投句しておいた優       秀句の表彰と作句。
  二十日 社会見学および文芸研修会、和歌山市万葉館、       会員およびボランティアの四十六名出席、万       葉館の館内およびその周辺の見学と散策なら       びに和歌浦にちなんだ俳句の作句。
  二十七日 市身連第一回教育講座、市ふれあいセンター、       会員六名出席、「食事と健康」についての講       演を聴く。
十一月十七日 県盲協主催中失者緊急生活訓練、県総合福祉       会館、十余名出席、中央情勢報告と歩行訓練       の実施。
十二月一日 文化研修会、県総合福祉会館四F大会議室、       会員五十六名出席、クイズ大会、文芸研修で       の投句の優秀作品の表彰と総評、カラオケ大       会の三部に分けて楽しい一時を過ごす。
一月十九日 更生相談院会および幹部研修会、市ふれあい       センター、午前は更生相談員会を午後は幹部       研修会として、会長の中央情勢報告と、宮本       副会長によるモンゴル見聞録をきく。
二月九日 市身連第二回教育講座、市ふれあいセンター、       会員十七名出席、「福祉の街作り」、「中核       市とは」の二題の講演を聴く。

消息
 本年中、次の方々が各方面より表彰を受けられました。おめでとうございます。
 平成八年五月十七日、日盲連全国大会において、「光の泉賞」日盲連会長表彰を南和分会の北野盛一さん、夫人松子さんが受賞されました。(静岡市)
 六月二日、和歌山市長表彰の自立更生に城東分会の千原出穂さん、同内助功労に東和分会の宮本美枝子さんが受賞されました。(市役所ロビー)
 九月二十九日、和歌山県知事感謝状「援護功労」に南和分会の児島義紹さんが、県知事賞「内助功労」に弘親分会の沢田涼子さんが受賞されました。(田辺紀南文化会館)
 次にお亡くなりになられた方は二名です。心よりご冥福をお祈りいたします。
 平成八年四月二十九日、西和分会の松本富穂さん(八十才)
 同、十一月十九日、河西分会の貴志 進さん(七十七才)

和視協婦人部平成八年度活動報告
   婦人部長 北本けい
五月 十九日 料理・お茶講習会
六月  九日 お花講習会
七月 十四日 料理・化粧講習会
九月二十九日 夏期講座、万葉館見学
十月  六日 お花・お茶講習会
十一月十七日 料理・お茶講習会
十二月二十二日 お花・お茶講習会
一月二十六日 お茶・冠婚葬祭のマナー講習会
二月  二日 料理・化粧講習会
 会員のご婦人のみなさん、婦人部にお入りになりませんか!楽しく学べる仲間です。部員一同、皆様の入会を心よりお待ちしています。お気軽にどうぞ。

会員コーナー
川柳をやってみませんか
   河西分会 寺下一夫
 川柳は江戸時代しいたげられていた。江戸の庶民が日頃のうっぷんをはらそうと、武士など特権階級の非道を、それとなく十七文字の詩に風刺し非難したのが始まりと伝えられている。
 時代がどう変わろうと社会のシワはいつも弱い立場の人間に寄せられることに変わりはない。
 健常者に比べ、我々障害者の生きていく道は、一層けわしいものであることは言うまでもない。
 こうした人生の悩みや苦しみを出来るだけ忘れ、少しでも明るく生きていく上で自分の好みに合った趣味を持つことの意義はきわめて大きい。それは砂漠を旅する者が行く先々のオアシスに疲れをいやし、明日への栄気を取り戻すのと同じである。
 趣味にも色々あるが文学的趣味の中で私たちに最も適したものの一つとしてお勧めしたいのが川柳である。
 それは冒頭に述べた、川柳発祥の動機にもよるものだが、更に川柳にはズブの素人に取っ付きやすい三つの要素を備えている。まず、第一に同じ十七文字の短い詩であっても俳句のような細かい決め事がないこと。第二に日常会話のことばで作れること。そして、第三は自分も含めた最も身近な人間の生きざまをそのまま表現出来ることである。
 とは言っても、人それぞれに好みが異なるから、どんなにいい趣味だからと人に勧められても、自分の好みに合わないものには手が出ない。
 しかし、自分にはどんな趣味が最も適しているか、はっきり分からない人が、かなりおられるようである。そういった人こそ、川柳をお勧めしたいのである。
 また、趣味は特に老後に必要だと言われている。それは頭や体を使うことでボケ防止や、健康の保持に必要だからである。しかし、気力、体力の衰えた老境から始めるのは大変だし、長続きもしない例も少なくない。少しでも若い内から始めることが大切であり、始めたときからストレス解消に役立つし、老後の万全の備えになること請け合いである。
 川柳は私たちには最も手軽で取っ付きやすい文であるが、だからと言って、すぐ上手になると言う訳ではない。やはり奥が深く、いつまで続けても究め尽くせないものである。だから楽しいので、簡単に出来上がるものは子どもでもすぐ飽きてしまう。
 以上は八十才の今日、文芸を心の杖として安らかな日々を歩んでいる私の三十年近い体験による川柳へのお誘いだが、やってみようと思われる方は、一度お電話を頂きたい。ご存知の文芸クラブの詳しい現状や、勉強方法などをお話したいと思う。
 どうせこの世は苦の世界!、くよくよしても始まらない。それよりも汚い政治の風刺や悪事への批判などを川柳にたくしてウサをはらし、美談や逸話を句に残して、人生の道しるべとしようではないか。最後にできたてホヤホヤの一句を!
 「うそつきの家の表札金バッヂ」

としよりの思い出
   南和分会 北野盛一
 入会したのは、四十三年ほど前であった。それまで別の障害者関係にいたために入会が遅れたのであるが、入会して間もない頃、分会長会、今の理事会があって、出てみると執行部の役員さんは業界の役員さんで占められていた。いわゆる二足のわらじと言うらしい。今はもうみんな故人となってしまい、こんなことを書いても怒こりはしないと思う。会議の中で時々業界と盲協の話がこんがらがってくる。
 青年部を除名してあるのだと話を聞いた。理由は文句は言うが会運営に力を入れないとのことで、青年部の行事に伴う予算や決算の報告もしないから除名したとのことであった。でしゃばりがいて役員に話をつけてやって復帰がなった。青年部は文芸に体育にあるいは技術の研鑽にと人数の少ない青年部でも懸命に働いてきたので、今日の市視覚障害者協会がある。会は青年・婦人で力を合わせてこそ、立派な会となるのである。益々の発展を願うのです。

世界を広げてくれた点字ワープロ
   城東分会 北口豊
 私は、先日四十回目の誕生日を迎えました。三歳の時に、はしかが元で失明し、三十数年間全盲の世界で生きてきました。全盲の世界と言いましても、殆ど先天盲に近い私には、晴眼者の世界を比較するには、あまりにもデータが少なすぎて比べようも有りません。数えれば限りなく相違点は有るのでしょうが、こと、文字文化に関しては最も顕著でしょうか。
 盲学校の小学部に入学してから一昨年夏まで、少なくとも私は「点字」と言う文字しか知りませんでした。勿論、墨字(我々の関係者間では、点字に対して普通文字のことをそう呼ぶ)の存在は常識として認識はしていたものの、自分の住所・氏名か、もしくはせいぜい両親・兄弟・姉妹の氏名を知っているのが関の山でした。それが、近代の目ざましい技術革新の副産物として、考え出された音声点字ワープロの出現を知ったのはつい数年前、機械物は嫌いな方ではないのですが、血液A型のせいか開拓精神に欠けるところがあって、もう一つ飛び込んで行く勇気が湧いて来なかったのです。それが、一年半前、所属する和視協の会長から、市のデイサービス事業で点字ワープロの講習会が開かれると聞き、喜んで受講の手続きをすませました。講習が進むにつれ、だんだん興味が出てきて講習で触るだけでは覚えられないと思い、少ない貯金をはたいて思い切って、機械一式を購入することを決心したのでした。
 大枚をはたいたのだから宝の持ち腐れにだけはしないぞと、暇を見つけてはワープロの前に座るようにしました。機械の操作には比較的早く馴れたのですが、悲しいかな点字しか知らなかった私には、漢字と言う大きな壁がありました。点字と言うのは、かな文字と同じですから表意文字である漢字変換の際に、どの文字に変換すれば良いのかが一苦労だったのです。小学生でも知ってるような文字でも、恥を忍んで誰かれなしにつかまえて尋ねました。でも、それは勇気のいることで、「ええ?、そんな文字も知らんの?」と思われるんじゃないかと気にしながら、「ぼくら点字しか知らんのでね」と、いちいち付け加えなければなりませんでした。だから自然に私の事を知ってくれている人にだけに尋ねるようになりました。
 そんなこんなで大騒ぎをしながらの毎日のある日、こんな事が有りました。市役所に手紙を書く用が出来、封書の表書きをするに当たり、「ふくしか」と入力して漢字変換してもどうもそれらしい文字が出て来ないのです。確認してもらう余裕も無かったので、そのまま投函しようと思ったのですが、どうしても気になったので直前に見てもらうと「ふくしかのかがちがうよ」、「え?」、「これやったら、ないかのかやで」、「え?、そうとちゃうのん?」。私は、福祉課といえば、市役所の一つの部所、総合病院で言う内科、外科も一つの部所、だから同じだと思い込んだのです。なのに、教えてくれた方に、「ええ?、福祉課も内科も同じ部所やろ。それやったら、病院の場合は内科課、外科課ってせなあかんのちゃうんか。」などと屁理屈をあびせる始末。
 晴眼者は常に目にしているような文字でも、私のような先天盲の者にとってはたいへん頭を悩まされることになるのです。きちんと基礎から漢字を勉強していないものだから、すぐ理屈で勝手に漢字を作ってしまうのです。それが最近、私のワープロもバージョンアップして、電子ブックの辞書も使えるようになり、分からない文字はその辞書で調べるようにしています。
 このデイサービスのおかげで、年賀状も自分で書けるようになったし、会の書類や手紙等も墨字で提出出来るので作業能率もアップするようになりました。それまで点字文化しか知らなかった私の世界が何倍もいや、何十倍も広くなったのは紛れもない事実ですが、と同時に子どもの頃から両親や友人たちから「屁理屈人間」と言われて来たのが、ますますおかしな理由づけをした新漢字を編み出すような左脳人間になるのはきっと間違いないことでしょう。

クイズコーナー
 今回は本誌の内容をヒントに出題します。しっかりお読み頂き、ふるってお申込下さい。正解者のうち抽選により五名の方に賞品をさしあげます。
 「問題」 次のア〜オに関係する数字の合計をお答え下さ     い。
 ア、川柳の標準構成文字数。
 イ、点字ワープロに関する記事の投稿をしてくれた方の年   齢。
 ウ、平成八年度和視協点字競技会の参加者数。
 エ、和歌山市が中核都市になる西暦年。
 オ、機関誌「白い杖」の発刊回数。
申し込み先 〒六四〇 和歌山市園部一二一五の四
     宮本克二
閉め切り 平成九年五月二十日
発表  景品の発送をもってお知らせいたします。

編集後記
 編集部
 和歌山市視覚障害者福祉協会機関誌「白い杖(二十五号)」を発刊出来ましたことは大変うれしく思います。
 会員コーナーにお寄せ頂きました原稿も昨年に引き続き、内容も興味深いものとなりました。編集担当者としても大変喜んでおります。又、クイズにつきましては、昨年同様、皆様方が気楽に参加して頂けるものとしました。
 これからも、皆様方にご愛読して頂く機関誌にして行きたいと思います。
 最後に、この機関誌発行に当たり、ご協力くださいました方々に心より感謝申し上げます。

 入会のおすすめ
 本会は、和歌山市内に居住、身体障害者手帳をお持ちの視覚障害者なら、どなたでも入会して頂きたい団体です。県盲人協会を通じて日本盲人会連合につらなり、市身体障害者連盟を通じて県身体障害者連盟に属しています。
 私達、視覚障害者の福祉を高めるには、何と言っても組織を強めなければなりません。その一つの策は、会員を増すことです。力が足りないため思うことの大部分は絵に描いた餅に終わっているのが現状です。未加入の方は、知友とおさそい合わせになってお入り下さい。手続きは至極簡単。入会の意志を会長あて申し込んで頂くだけで結構です。詳しいことは、その時連絡いたします。

☆事務所
 〒六四〇 和歌山市太田五八六番地の八
      北山 豊
 電話  七一局 七一九四




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