白い杖 第45号


和歌山市視覚障害者福祉協会機関誌「白い杖」第45号




        白い杖 第45号

        平成29年3月

     発行  和歌山市視覚障害者福祉協会



        目次

 巻頭言
 和視協この1年を振り返る
 平成28年度和視協女性部行事
 新人さん、いらっしゃあい!!
 文芸の広場
 あがらの広場
  サピエを利用してみませんか  新光分会 畠中常男
  NHK喉自慢予選会に参加して  和歌浦分会 西中利明
  握手  川北分会 南部照明
  日々思うこと  東和分会 松廣圭子
  編集長ご苦労様〜福袋と詰め込み放題  東和分会 寺本津規子
  懐かしいあの頃  河西分会  坂井法子
  究極の選択  和歌浦分会 北口豊
 お楽しみ検証クイズ
 編集後記



        巻頭言

                    会長  畠中 常男

 まずこの1年、皆様方からいただいた、和視協へのご支援とご協力に対し、役員一
同、心より感謝申し上げます。
 今年度は特に、4月から私たちの悲願でもあった「障害を理由とする差別の解消の
推進に関する法律」が施行されると同時に、当市においても「和歌山市障害者差別解
消推進条例」が動き始めると言う大きなうれしいニュースがありました。 反面、7
月に神奈川県で起きた、障害者施設における大量殺傷事件や、視覚障害者のホーム転
落事故、盲導犬使用者への入店拒否やタクシー乗車拒否など、バリアの厚さ高さを再
認識させられたのも、この1年でありました。
 私はかねがね、情報の風通しの良さが、よりよい会の発展をはぐくむと考えており
まして、現在和視協では、会の情報をみんなで共有することを目的に、点字と墨字、
録音媒体と電子メディアを利用して、この機関誌「白い杖」や、和視協からのお知ら
せの発行、ホームページへの情報掲示などを行っております。
 特に和視協からのお知らせは、当会からの告知はもとより、県や市の連盟、日盲連
や県視協の情報など、会員の皆様にお知らせしたい情報を、カセットテープと電子メ
ールで発行しておりますが、まだ和視協からのお知らせを購読されていない方がおい
でです。 是非、カセットテープかメールで、会からの情報を受け取って下さいます
ようお願いいたします。 また、聴覚にも障害があり、音声での聞き取りが難しい方
については、点字でのお知らせをお送りしますので、是非執行部までご相談下さい。
 さて、皆様もお気づきでしょうが、このところの社会や世界の動きが、以前とはか
なり違ってきたように思われます。 従来の価値観、権威、常識が否定され、ともす
れば本音を主張する自己本位の考え方や行動がまかり通る、いわゆるポピュリズムが
横行する時代になってきたように感じられます。 これは、寛容さや思いやりの心で
成り立つ福祉社会にとって、憂慮すべき危機ではないでしょうか。
 ともかく変化多きこの時代、私たち障害者を取り巻く環境は、決して穏やかなもの
ではあり得ません。 どうぞ今後とも、和視協に皆様のお力をお貸し下さい。



        和視協この1年を振り返る

                    書記  坂井 勉

 平成28年度も色々な出来事がありました。 リオデジャネイロオリンピック・パラ
リンピックでは日本人選手の輝かしいメダルラッシュに国中が元気になりました。 
4年後は東京です。 そして10年後には大阪万博の期待も膨らんでいます。
 しかしながら悲しい出来事も多くありました。 私たち障害者には許し難く、また
、とても悲しい衝撃的な事件、それから熊本の大地震や新潟県糸魚川市の大火災等。
 来年度こそは明るく良い年でありますようにと祈念する次第です。
 会員の皆様どうかこれからも元気でお過ごし下さい。


        平成28年度和視協事業報告

4月 3日 和視協28年度総会 ふれ愛センター 3階研修室(1)
 出席: 38名 委任状: 32通
役員改選の結果 会長: 畠中常男氏  副会長: 北口豊氏 幸前勇氏
        監事: 松下淳二氏 宮本克二氏

4月17日 和視協 執行部会・理事会
 ふれ愛センター 3階会議室(2)
書記に坂井勉氏、会計に能澤義和氏が選任される。

6月 5日 和視協点字教室 ふれ愛センター 2階会議室(1) 
 「点図で楽しむ迷路・浮世絵他」 講師: 北口豊氏・寺本津規子氏
参加者21名

7月 3日 和視協第1回教養講座 ふれ愛センター 4階会議室
「宇宙からの目で皮膚を診る」 講師: 近畿大学生物理工学部システム生命科学科講
師:永岡隆先生 参加者30名

8月 2日 和視協 iPhoneによる携帯電話教室
 ふれ愛センター 4階会議室
 講師: ドコモ・ハーティー講座 担当者 参加者14名

8月21日 和視協第2回執行部会・第2回理事会
 ふれ愛センター 3階会議室(2)

9月11日 和視協社会見学・文芸大会
 福祉バスにて真田庵・真田ミュージアム他  参加者30名

10月 9日 和視協福祉学習会 ふれ愛センター 4階会議室
 「防災用品の準備は出来ていますか?」
 〜災害時にどのような物が必要か?〜
 コーディネーター 幸前勇氏 参加者30名

12月 4日 和視協文化研修会 ふれ愛センター 4階大会議室
 文芸発表会・表彰式 苑蓉(えんよう)さんによる「中国琵琶演奏会」 参加者50名

平成29年 1月15日 和視協研修会 ふれ愛センター 2階視聴覚室
 「マイナンバーについて」
 講師 和歌山市共通番号調整課: 松尾和彦課長 同課: 田村充弘氏 障害者支援課
: 楠見和弘班長  参加者40名

2月11日 和視協第2回教養講座 ふれ愛センター 2階会議室(1)
 「できることの見つけ方〜全盲女性の国際貢献」
 講師: 政府フィリピン障害者支援事業プロジェクトマネージャー
    石田由香里氏  参加者50名
 同 日 和視協第3回執行部会 同所

3月12日 和視協執行部会・第3回理事会
 ふれ愛センター 3階会議室(2)


        関連団体の事業

 今年度より、県身連の会長に渋田年男氏・県視協の会長に宮本克二氏が新しく就任
されました。 又市身連の会長には畠中常男氏が再任されました。

4月17日 市身連平成28年度代議員会 ふれ愛センター
5月22日 市身連平成28年度社会見学 
 エキスポシティ・国立民族学博物館(吹田市)
6月12日 県視協文芸大会「俳句」 県総福
7月24日 市身連市長杯争奪将棋大会 ふれ愛センター
8月 7日 県視協点字講習会 県総福
8月30日 連盟福祉対策協議会「これからの福祉について」
     ふれ愛センター
9月18日 第59回和歌山県身体障害者福祉大会 橋本市産業文化会館
11月13日 市身連第64回福祉大会及び第1回教育講座
     ふれ愛センター
12月11日 市身連第3回理事会・懇親会 アバローム紀の国
平成29年 1月27日 日盲連近畿ブロック協議会女性部連絡会議
     ふれ愛センター
2月26日 市身連平成28年度第2回教育講座 京都鉄道博物館見学


        平成28年度表彰者

 今年度は以下の方々が表彰を受けられました。
 おめでとうございます。

平成28年 9月11日 第59回和歌山県身体障害者福祉大会において
         県身連会長表彰 礎賞 松下淳二氏

平成28年11月13日 第64回和歌山市身体障害者連盟福祉大会において
         会長表彰 宮地良和氏 会長感謝状 楠本芳美氏

平成28年12月 3日 平成28年度和歌山市障害者福祉表彰表彰式に
         おいて
         市長表彰 和歌山市障害福祉賞 畠中常男氏
         市長表彰 自立更生者賞 坂井勉氏


        会員の動向

 平成29年 2月現在 会員数95名

     新入会員
 三栖 寛晋(みす ひろゆき)さん   紀伊分会  平成28年4月
 橋爪 里美(はしづめ さとみ)さん  和歌浦分会 平成28年6月
 弓矢 雅人(ゆみや まさと)さん   和歌浦分会 平成28年11月

     退会者
 南出 育代さん (東和分会)
 山本 好延さん (和歌浦分会)

     お亡くなりになった方
 北山 豊さん (東和分会)
 北山さんは、去る平成28年12月12日に逝去されました。
 ご承知のように、永年当会の会長を務められ、県視協の会長や日盲連理事等の要職
を歴任され、永きにわたり障害者福祉に貢献されました。 謹んで北山さんのご冥福
をお祈り申し上げます。



        平成28年度和視協女性部行事

                    部長 坂井法子

  平成28年度女性部行事のご報告です。
  女性部の皆様いつも女性部行事に、ご参加ご協力頂き有難うございます。
  今年度は、以前のように午後に行事を行いましたが、いかがでしたか? ご意見
をお聞かせ頂き今後の参考にしていきたく存じます。
  その一例ですが、研修会「触って楽しむ」では、日ごろのボランティア活動のお
話や、視覚障碍者が実際の動物の形や表面の手触りが想像出来るように工夫して制作
された絵本や、動物などを手に取って触らせていただきました。 また、参加者の皆
さんが持ち寄った便利グッズで楽しいひとときを過ごしました。
 それと、「朗読を楽しむ」では、楽しい朗読とともに、グループ声山本和子名誉会
長の、パワーに圧倒され元気をいただきました。


     平成28年度女性部行事

   和歌山県視覚障害者福祉協会女性部 研修会・総会
   日時 平成28年 4月10日(日) 11:00〜15:30
   場所 田辺市民総合センター  参加者16名

   童謡を歌う集い
   日時 平成28年 5月15日(日)午後 1時30分から
   場所 海南市保健福祉センター
   講師 童謡を歌う集い実行委員会  参加者 15名

   カラオケ教室
   日時 平成28年 6月 1日(水)午後 1時30分から
   場所 ふれ愛センター 4階大会議室
      サポーター 3名  参加者  6名

   手芸教室
   日時 平成28年 7月24日(日)午後 1時30分から
   場所 ふれ愛センター 4階会議室
   講師 山崎由記子氏  参加者 13名

   体操教室
   日時 平成28年 8月28日(日)午後 1時30分から
   場所 ふれ愛センター 4階大会議室
   講師 松本稔代氏  参加者 11名

   バルーンアート教室
   日時 平成28年 9月25日(日)午後 1時30分から
   場所 和歌山市ふれ愛センター 4階会議室
   講師 松本真生子氏  参加者 20名

   研修会「触って楽しむ」
   日時 平成28年10月23日(日)午後 1時30分から
   場所 ふれ愛センター4階会議室
   講師 ボランティア・拡大写本「あかり」
   参加者 20名

   研修会「朗読を楽しむ」
   日時 平成28年11月27日(日)
   場所 ふれ愛センター 3階研修室 2
   講師 朗読ボランティア・和歌山グループ声
   参加者 20名

   料理教室
   日時 平成28年12月18日(日)午前10時から
   場所 ふれ愛センター 2階調理室
   講師 鯨 徳代氏  参加者 25名

   近畿ブロック女性大会
   日時 平成29年 1月27日(金)午前10時から
   場所 ふれ愛センター 2階会議室1
   担当 和歌山県視覚障害者福祉協会女性部

   講演会 落語鑑賞会
   日時 平成29年 3月5日(日)午後 1時から
   場所 ふれ愛センター 2階会議室 1
   講師 和歌山「楽落会」
   同日 平成29年度和視協女性部総会



        新人さん、いらっしゃぁい!!

 ここでは、28年度内に入会してくれた方々を紹介します。
 トップバッターは、橋爪里美さんです。 橋爪さんは神戸市生まれ、子供の頃から
弱視でしたがあの忌まわしい阪神・淡路大震災の時の事故が元で急に視力も低下した
とのこと。 その後、知り合いを頼って和歌山市に転居。 同じ視覚障害の友達の紹
介で本会に入会してくれました。 底抜けに明るい方で、女性に失礼を承知で年齢を
尋ねてみたら、元アイドル歌手の早見優ちゃんが同い年かな?堀ちえみさんは一つ下
だったかなと教えてくれました。 現在はコザクラインコのチーちゃんと二人暮らし
とか。 皆さん仲良くしてください。

次は、三須さんから頂いた自己紹介文をそのまま掲載いたします。

 初めまして。昨年4月に入会させていただきました三栖寛晋と申します。
 私は和歌山盲学校で幼稚部から理療科までの学生時代を過ごし、現在は母校で理療
科教員をしています。学生時代には勉学に励む一方で、クラブ活動でグランドソフト
ボールやフロアバレー、サウンドテーブルテニスなどのスポーツを楽しみ、それらは
現在でも私の趣味となっています。 その他にも新たに夢中になれることを探すため
に様々なことに挑戦していきたいと考えているところです。
 昨今、無免許問題やあはき法19条を巡っての裁判等、視覚障害者や治療師を巡る
問題は複数存在しますが、私自身は社会経験が少なく、一人の教員として、視覚障害
者としても、これらの問題に対して何ができるかまだまだわからない状態です。 和
視協ではたくさんの方々と出会い、多くのことを学び、自分の知識や経験の引き出し
を増やしていきたいと考えています。 そして、学んだことを教育活動に生かし、優
れたあん摩マッサージ指圧師・鍼師・灸師の育成に尽力したいと思います。 今後と
もどうぞよろしくお願いいたします。



        文芸の広場

 本会には俳句を楽しむ「若竹」と川柳で頑張っている「ドングリ」の二つの文芸サ
ークルがあり、12名の人達が句作で脳トレをしています。
 以下に28年度中に俳句の大倉義正、川柳の三宅保州のお二人の先生から好評価を頂
いた文芸大会と各月に通信指導を受けている句集の中からその句を紹介します。
 皆さんも当サークルに入って脳の活性化にチャレンジしてみませんか。 我こそは
と思う方は北口まで。


        「若竹」(俳句)  大倉 義正 選

 元旦や津波誤報に驚きぬ        (市川 和郎)

 母の雑煮食べたくてまた里帰り     (北口 豊)

 柏手を雅楽に合わす初詣        (栗本 邦男)

 ニーハオが飛び交っている初電車    (丸山 孝雄)

 鬼やらふ豆にじゃれつく仔猫かな    (市川 和郎)

 ヒヤシンス香るや妻の深き愛      (栗本 邦男)

 昨日とは打って変わりし余寒かな    (北口 豊)

 メークイン煮崩れてをり長電話     (丸山 孝雄)

 「せいくらべ」聞きつつ食ぶる柏餅   (市川 和郎)

 大きいな母手づくりの柏餅       (吐前 敦子)

 紫陽花の道白杖を突き行けり      (北口 豊)

 大紫陽花雫を垂らす雨上がり      (市川 和郎)

 紫陽花の大毬小毬咲きにけり      (河野 敦美)

 法師蝉鳴けど恋しき木陰かな      (栗本 邦男)

 つくつくぼうし二学期が始まるよ    (丸山 孝雄)

 散歩道つくつくぼうし鳴き出せる    (吐前 敦子)

 丁石道庭ごとに柿色づきて       (丸山 孝雄)

 どれも皆同じ顔して吊し柿       (北口 豊)

 コーヒーに洋酒のともに吊し柿     (宮本 克二)

 枝高き鳥が啄む木守柿         (宮地 良和)

 干し柿や古希にポケモンゴー習ひ    (宮本 員代)

 柿くえば近く聞こゆる汽笛かな     (北口 豊)

 柿の里入り日に染まる畠の人      (宮本 克二)


        「ドングリ」(川柳、括弧内は課題です)  三宅 保州 選

 町並みに消えゆく風情やいかがし    (「節分」 義和)

 ふるさとの爺へ電話で福は内      (「節分」 章雄)

 恵方巻き家族団らん鬼も内       (「節分」 志津子)

 鯨でも蟻でも命一つだけ        (「命」 途夢太郎)

 余命知り悔いなき介護家族愛      (「命」 義和)

 生きながらえて人の親切身にしみる   (「命」 道)

 六月の花嫁雨の中を行く        (「梅雨」 道)

 部屋干しの妻の苦労がぶら下がる    (「梅雨」 章雄)

 梅雨時に部屋のパンツが顔撫でる    (「梅雨」 義和)

 汗かいて一円の価値知りました     (「汗」 途夢太郎)

 汗だくで初寝返って皆拍手       (「汗」 義和)

 介護する母の背中に汗しずく      (「汗」 章雄)

 知らされず悔やみも言えず家族葬    (「家族」 義和)

 あと何度母と話せる里帰り       (「家族」 孝雄)

 メダリスト家族の支え口にする     (「家族」 照明)

 嫌なこと忘年会で忘られず       (「師走」 照明)

 かみってる言ってみたいねジャンボくじ (「師走」 義和)

 アフリカの隊員憂う年の暮れ      (「師走」 章雄)

 双六で子ら賑やかなお正月       (「六」 武司)

 6月が祝日無くてひがんでる      (「六」 照明)

 真っ盛り六文銭と柿の里        (「六」 西中利明)

 六星の光で今日も生きている      (「六」 途夢太郎)



        あがらの広場

 ここでは、会員の方からお寄せいただいたそれぞれの思いをしたためてくれた珠玉
のエッセーを紹介します。 じっくりと味わってください。


        サピエを利用してみませんか

                    新光分会  畠中 常男

 あなたは毎日のお暇な時を、どのようにしてお過ごしですか。
 テレビの番組にもおもしろいものはないし、ラジオもつまらないトーク番組ばかり
で私の興味を満たしてくれるものは本当に少なくなりました。 そういう不満を家族
に言うと、「それはあなたが年をとったから」と冷たい反応。 と言われてもおもし
ろくないものはおもしろくないのです。 そこで最近、サピエのデイジー図書や点字
図書を聞いたり読んだりすることにしています。
 ご承知のように「サピエ」は、視覚障害者等が、点字図書や、デイジー図書を無料
で利用できるインターネットサイトで、全国の点字図書館等が加盟する団体「全視情
協」が運営しています。 現在約1万5千人の視覚障害者が利用しており、点字データ
約18万タイトル以上、デイジーデータ約7万タイトル以上が所蔵されており、パソコ
ン等を使って、自由にダウンロードできるとのことです。
 (https://www.sapie.or.jp/sapie.shtml より一部引用)
 1年間に発行される活字の出版物が約8万タイトルと言われていますので、それに比
べればまだまだ少ないとも言えますが、以前の視覚障害者の読書環境を知るものにと
っては隔世の感があります。 一般の文芸書や雑誌をはじめ、新書や専門書、漫画や
解説付きの映画の音声など、本当に多くのコンテンツが楽しめるようになりました。
 中でも雑誌は、直接ダウンロードできますので、郵送に要する期間が無くなり、タ
イムラグが少なくなって、以前よりタイムリーに記事を楽しむことができます。 ま
た、図書を選ぶに当たっても、試し聞きをしてから利用することができますので、本
屋さんで好みの書籍を購入するような感覚で、利用することが可能になりました。
 因みに、私は気楽に読める本が好みで、最近利用した者としては、柳家紫文(やな
ぎやしもん)著「人生に役立つ都々逸読本〜七・七・七・五の法則」、椎名誠(しいな
まこと)著「地球上の全人類と全アリンコの重さは同じらしい。」、杉浦隆幸(すぎう
らたかゆき)著「Googleが仕掛けた罠」(小学館新書)などです。 また、自分の読み
たい本が、サピエ図書館に無い場合は、全国の点字図書館が所蔵する約66万タイトル
を検索して、オンラインでリクエストして取り寄せることもできます。
 最近活字の世界では、アマゾンや楽天などのサイトから、電子ブックをスマホやタ
ブレットに取り込んで、利用する人が多くなってきたようで、2010年が電子ブック元
年であると言われていますが、視覚障害者の世界においては一足早く、1988年から開
始された点訳広場、ないーぶネットを経て、2004年に始まった、サピエの前身である
ビブリオネット、それから2010年4月に、現在のサピエがサービスを開始したとのこ
とです。 また、2014年からは、国立国会図書館所蔵図書を、サピエを通じて利用で
きるようにもなり、さらに多くの本が読めるようになりました。 これらの利便を享
受できるのも、全国各地で朗読や点訳の労を執って下さる、ボランティアの方々のお
かげであると、常々感謝しております。
 サピエを利用するには、会員登録を https://www.sapie.or.jp/entry.shtml から
オンラインで行うか、和歌山点字図書館に電話をかけて、「サピエの登録」をお願い
して下さい。 また、デイジー図書を聞くための再生装置(プレクストーク)や、点字
を読むためのディスプレイについては、視覚障害者用の日常生活用具として、公的補
助が受けられますので、和歌山市役所の障害者支援課にご相談下さい。
 ただ、サピエはインターネット上のサービスですので、原則としてネットに繋がる
パソコンが必要です。
 どうしてもパソコンが苦手と言う場合、パソコンを使わないサピエの利用方法もあ
りますので、詳しくは和歌山点字図書館にご相談下さい。(この場合も、インターネ
ット契約のみが必要)
 読書は、きっとあなたの知的好奇心を満たし、余暇を充実させてくれます。 どう
ぞサピエを楽しんで下さい。
 和歌山点字図書館 電話 423-2665
 和歌山市役所 障害者支援課 電話 435-1060

(確かに我々の読書環境は一変しましたね。会長、サピエのコマーシャルありがとう
ございました。 全視情協事務局長に成り代わり編集者からも感謝です。)



        NHKのど自慢予選会に参加して

                    和歌浦分会 西中利明

 今から約20年くらい前に和歌山放送の特別番組でカラオケ大会の出場者を募集とい
うのがあり、根が目立ちたがりやの私がそんなおいしいチャンスを逃すはずが無く、
きっちり出場して生放送で歌ったことがありました。 それに味をしめ、今度はテレ
ビだとますます野望は膨らむばかり。 その頃、毎週日曜日の夕方毎日放送で放送さ
れていた名人会に出ようと思い応募したのです。 やがて予選会の案内状が届き、千
里丘の山の上のスタジオまで行きました。 すると、なんと幸運にも合格してしまっ
たのです。 「順番が来たらお知らせします」ということでその日は帰りました。
 それから1年近く待った頃、毎日放送から封書が届きました。
 逸る気持ちを抑えながら封を開けてみると「会場である梅田花月が閉館するため、
番組が終了します」という愕然たるお知らせでした。 それから数年後、田辺市でNH
Kのど自慢があるという案内を見て、「これやあ!!」と喜び勇んで応募しました。
 ひと月ぐらい経って往復葉書の返信が帰ってきて、それを読んでもらうとなんと「
折角応募していただきましたが受信料を払っていただいてないので無効とさせていた
だきます」という返事でした。 それで、野望には勝てず、早速受信料免除の手続き
をして次の開催を待ちました。
 1年半が過ぎた頃、和歌山市で開催があり、応募すると、今度は「800人を超える応
募が有って、折角ですが抽選から外れました。 次の機会にご応募をお待ちしていま
す」というものでした。 それからまた1年半ごとに和歌山市・海南市・紀伊勝浦(
これは遠すぎるので止めにして)、御坊市、粉河町と次々と各地で開催があったので
すが、その都度応募したものの、ことごとく抽選で外れてしまいました。 そして今
回(2016年)九度山町で開催の応募受付があり、再再度チャレンジしたのです。 ひ
と月後にNHKから封書が届きました。 何故かそれは今までのものとはちょっと違い
、分厚くて、ひょっとしたらという予感が当たり、それは合格通知でした。 会場ま
での地図や交通アクセス、出場に際しての注意事項が同封されていたから分厚かった
のです。 読んでもらうと交通の不便な処なので自分一人で行くのは無理だと思い、
ヘルパーさんに一緒に行ってもらうことにしました。 確認すると、予選会も12時か
ら始まり、終わりが 6時、往復の時間を考えるとほとんど10時間ほどになります。 
それに万が一合格すると二日間で20時間にもなってしまうので、市役所に同行援護の
持ち時間を増やしてもらおうとお願いに行くと「プライベートのことなので40時間内
で行ってください」と言われ、申し込みも受け付けてくれませんでした。 仕方が無
いのでいつもの買い物やスポーツの時間を減らして調整しました。

 予選会当日( 6月11日の土曜日)私たち夫婦とヘルパー二人が1台の車で、そして
応援の先輩とそのヘルパーが別の車に分乗して現地で落ち合うことになり、会場の九
度山町立体育館に11時頃に着きました。 受付を済ませると250人中の240番目だった
のでとりあえず昼食に行き、 2時間ほどで帰るとまだ60番目、皆の歌を聴いていると
一人が1分ほどで終わりです。  4時間ほどが過ぎてステージ近くに行くと、予選会
でも和歌山では放送されるということから、着衣にメーカーのマークやロゴが無いか
チェックされ、いよいよステージでスタンバイ。 スタッフの人が「これ触ってみて
ください」と言うので手を出してみると、それは本戦の優勝トロフィーでした。
 やがてステージの中央に案内され、マイクを渡され、司会者の案内通りに大きな声
で「240番、よろしく哀愁」と言うと演奏が始まり、歌い始めました。 ちょうどさ
びの部分が終わった所で司会者に「ありがとうございました」と言われてマイクを返
してステージを降りました。 そして、本番の司会者の小田切千さんの前に案内され
、二つ三つ質問されて席に戻りました。 参加者はみんな光り物を衣装に付けていた
り、応援団もペンライトや紙テープで応援していました。 それから暫くして 5時半
頃に結果の発表があり、予想通りそこには私の名前はありませんでした。 でも、今
回予選会に参加して分かったことは、テレビではたった45分ですが、全国を回ってい
るスタッフは移動や舞台設定・予選会、本番と三日・四日間も費やすのだと知りまし
た。 そして、視覚障害者は今回私独りでしたが、ステージへの誘導・サポートをと
ても丁寧にしてくれました。 その後の予選会の放送を見るとマイクを持つ手が小刻
みに震えていたようです。 でも、カラオケではなく生バンドで歌えたのは良い記念
になりました。 ちなみに、その演奏は本番と同じバンドだったのです。
 今回の体験は初めてのことでしたが、沢山練習を積んでいつの日か本番で歌えるよ
うになるよう頑張ります。

(西中さんの視力が落ちてからの前向きなバイタリティーにはいつも敬服しています
。 次回はどんなチャレンジ話が聞けるかな?。)



        握手

                    河北分会  南部 照明

 私は島倉千代子ファンで後援会にも入っていました。 今で言うところのファンク
ラブです。 ボランティアさんと出会ってからはリサイタルや大阪の梅田コマの舞台
を何度も見に行きました。 その最初の舞台でなんとか握手する方法は無いものかと
言ったら「花束を持って行ったらどうですか」と言われ、早速買い求め、一番前の席
で中央の席が取れたのでワクワクしながら出かけ、生のお千代さんを見て、歌いなが
ら私の前に立ったので握手することができ感動しました。  その後後援会の集まり
に来てくれて当時流行っていた「ホウセンカ」の歌のレッスンをみんなでして、レコ
ードを買ったので握手してもらい、みんなの中にお千代さんも入って写真も撮りまし
た。 もちろんアルバムに残っているはずですが、残念ながら見ることができません


 話変わって、学生時代に巨人の王・国松・城之内が来てくれましたが、アンチ巨人
の私は近寄りませんでした。 他の学生は握手してもらって大喜びでした。 その徳
島盲学校100周年の時に柔道の山下泰裕が来てくれました。 何しろ我が母校の柔道
部は私が中学生の時に出来た歴史があります。 余談ですがリオパラリンピックで藤
本聡君が銅メダルを獲りました。 それで山下ですが、なんと懇親会まで居てくれて
、お開きの時にみんなと握手してくれ、私もヘルパーさんに促されて大きな手に触れ
てきました。 あの頃、私のクラスメイトが視覚障害者の柔道連盟の役員をしていた
ようで、山下と面識があったようです。
 若い頃はいろんな歌手のリサイタルに行きましたが、印象に残っているのは美川憲
一で、ファンサービスで舞台から降りてきて握手をし始め、なんと私の前まで来て「
ごめんなさい時間になりました」と私の出した手に握手することなく舞台に上がって
いった。 確かに切り上げどころは難しいでしょうが何時間もかかるわけでもないの
にとムカムカしました。 なんだか拒否されたような気分でした。
 うんと若い頃は握手の習慣がなくて良かったです。 なにしろ掌によく汗をかいて
仕事に差し支えるのではないかと思ったほどで、石けんで神経質と思われるほど洗い
ました。 握手するときは相手の目をしっかり見なさいと言われたが、我々はそれが
上手く出来ませんね。 私が先天性だからかも知れません。 不作法にならないよう
気をつけたいものです。

(南部さん、楽しいエッセーをありがとうございました。 私も三重県での障害者ス
ポーツ大会の時に現平成天皇が皇太子の時にした握手が忘れられません。)



        日々思うこと

                    東和分会  松廣 圭子

 苦と楽は、人の一生平等である。 昔から若い時の苦労は買ってでもせよ、と言う
。 年寄ってからの苦労、心配は耐えがたいものである。
 私は、ますます視力がおち、見え辛くなりました。 でも、白杖を使わなくても歩
けています。
 市の同行援護のおかげで、友達とあちらこちらへ行ける日々に感謝しています。
 隣人の息子さんが経営しているデイサービスにも出かけ歌って笑って一日を楽しく
過ごしています。
 気の合った友達もできて、実に楽しい老後(とはまだ言いたくないが)です。
 それに、また最近、特に嬉しいことは同じ視覚障害をもつ、仲良し三人組ができた
こと。
 更にうれしいのは、ひょんなことから、ケアマネさんが「休日にうちのカラオケル
ームを使うといいですよ」と言って下さり送り迎えで、熟女三人、三時間、月 2回思
いきり歌わせて頂いてます。
 昔懐かしい歌に、けっこう新曲も練習することもあります。
 楽しい楽しい時間があることに心から感謝する日々です。
 カラオケの終わりには「ここに幸あり」を三人揃って歌い「今日の幸やね」と喜び
合い、出して頂いたコーヒーと持ち寄りのお菓子を頂いて満足顔で、お礼をのべて、
帰路に着きます。
 幸せは人それぞれです。
 私は色んな人に助けられ、ここまで来ました。
 おかげで、今、元気に楽しく過ごせています。
 これからも人の縁を大切に生きて行こうと思います。

(松廣さん、ご高齢になってからの視力低下、大変なご苦労があったでしょうが、前
向きに舵をきられての日々、微力ながら私も応援したいものです。)



        編集長ご苦労様 〜 福袋と詰め込み放題

                    東和分会  寺本 津規子

 機関紙「白い杖」の原稿の締め切りは、12月末のはず!!書くのは苦手だけれど
、東和分会長として、毎回おひとりの方に原稿を書いていただく様ちょっと強引にお
願いをしていますので、私も何かを書かなければと思っていましたが、1ヶ月近く風
邪ひきに悩まされまして、あっという間に12月が終わってしまって。 あーあ、と
、思っていましたら、北口編集長にふれ愛センターの階段ですれ違いざまに「白い杖
の原稿何か書いてよー。」私は上の階に北口さんは下の階に階段を移動中、「いつま
でに書いたらいいのー。」北口さんがなんていったかわからずに聞き返すと、センタ
ーの古川さんが、「今月まつといってます」と、こんな感じで原稿を書かせていただ
くことになりました。
 さて、何を書こうか? いや、これしかないか!12月末だったら絶対にかけない
ことだけれど、まー、いっかー。
ーー 福袋と詰め込み放題 −−

 わが家の元日は毎年2・300メートル離れた夫の実家で一人暮らしの姉と、私た
ち家族が集まり、12時ごろから、おせち料理をいただくのが恒例となっています。
 それで、福袋の大好きな夫と私は、元日の9時半ごろからスーパーイズミヤへ出発
(これも恒例行事)。 「もう、洋服もいっぱいあるし、福袋もいらんかなー。」と
、言いながら、「みるだけ!」なんて言って今年も・・・。 いつもより短時間で選
んで購入。 福袋のワゴンのそばには袋の中身の見本のチラシと現物がハンガーにか
かっていて、品定めをしてベージュ系かグレー系か袋の隙間から覗き込んで、袋に書
かれたサイズを確認して、レジにて、1万800円。夫が選んだものは、ストライプ
のカッターシャツとセーターと、ブルゾンの3点セット。 4万円相当だとか。  
「時間もあるしそこら辺をちょっと見て帰ろうか」と話しながら歩いていると、靴下
つめ放題の放送が。 ワゴンに近づくとひとだかり、1080円のシールの貼られた
チャックシールの袋を手に選んだ靴下をみんな必死になって詰めています。 私たち
も夫が男性用靴下を選んで私のもとに運んできます。 私はどうやったらたくさん詰
められるかたたんでみたり、ギュッと丸めて袋の中に押し込んでみたり。 「もうこ
んなものかなー」と私が袋の両脇とチャックシールの部分をギュッと縮めて、夫がチ
ャックを締めよーと苦心していると、そばで詰めていた人が、「袋の上、しまらんで
もいいみたいやでー。」と教えてくれたので、私が袋の両脇を4本指で支え、両手の
親指2本で盛り上がる靴下をギュッと抑え込んで持ったまま、「これでいいですか?
」と言いながらレジの店員さんに渡すと。 「はい」と簡単に支払いを終えて、次は
男性用トランクス、そして婦人用靴下もつめ放題して、3回もレジに。 めちゃ愉し
い気持ちで家に帰ってきました。 
 それから1週間後スーパーに買い物に行くと、予定の買い物より先に、食品の福袋
千円が夫の目に!「これも面白そうやな、買ってみるか」と、さっさと手にさげて、
「なに入ってるんやろ、マヨネーズとか、カレーのルーとか入っているのかなー」な
んて思いながら家に帰るとやっぱり気になって、冷蔵庫に収める食品そっちのけで、
福袋の中身を確かめると、パン粉200g、ヤマキ花かつお80g、コンソメスープの
素60g、レトルトカレー1食分、豆乳クッキー2枚入り1個、缶コーヒー1本、ふ
りかけ22gひと袋、紙パック入り2倍希釈のつゆ500ミリリットル1本。 リプ
トン紅茶ティーパック25個入りひと箱、お吸い物詰め合わせ6袋入りが一つ、ねり
しょうが1本、クリームシチューのルー10皿分ひと箱が入っていました。
 ほとんど使えそうなものでほっとしました。
 こんな原稿を白い杖に書くんだと夫に話していると、来年は近鉄の二日の日に食品
売り場の福袋見てみたいと言い出し、大笑い。 私は今回はつめ放題で遊んだのがと
ても楽しくてほかにもつめ放題があったらいいのにと思ってしまいました。
 ちなみにつめ放題は、男性用靴下10足。トランクス10枚、女性用靴下11足で
した。「白い杖の」クイズの景品として、男性用と女性用の靴下3足ずつをお送りし
ますので、北口編集長のクイズにどしどしご応募ください。

(寺本さん、ご協力感謝感謝です。 これでクイズへの参加者も増えるかな?)



        懐かしいあの頃

                    河西分会  坂井 法子

 最近母とお茶を飲みながら、私の幼かった頃のことをよく話しす。 ほとんどが1
年生になるまでのことで、私も母も互いに記憶は曖昧ですが、それはそれなりに楽し
いひと時です。
 私が生まれたのは福岡県嘉穂郡桂川町に在った明治炭鉱の社宅で、周囲は田圃や畑
が多く、ちょっと先にはぼた山も見えました。 街へ行くバスは有りましたが車はあ
まり観た記憶はありません。 (憶えてないだけかも分かりませんが)家の前には立
派な桜の木が2本、裏にも桜や柿・イチジクやキンカン等が植えられていて、小さな
鶏小屋にはいつも鶏が4・5羽「コッコッコッ」とにぎやかに餌をついばんでいました

 桜の咲く頃になると近所の人がうちに集まり花見の宴会が始まります。 みんな飲
んで歌って(もちろん手拍子で)、その時の私の居場所はいつも父の胡座の中、今思
い出しても一番の心地良い場所だったかも!
 そして桜で思い出すことがもう一つ。 その頃の父は写真を撮るのが趣味で、自分
で現像もしてました。 その中の1枚に、裏庭の桜の木の上で3歳くらいの私が足を
開いて踏ん張って立っている写真が有ります。 母は「あんたはおてんばやったから
」と言いますが、小さかった私が一人で上れるはずも無く、おそらく父が面白い写真
を撮ろうと思ってわざと載せたのだと思います。 この1枚は今も母の手元に在るア
ルバムに収まっています。
 それから、沢山在る思いでの中からもう一つお話しします。 私には12歳でこの
世を去った二つ年上の兄がいました。 その兄との大切な思い出です。
 私の住んでいた地域は冬になると辺り一面の銀世界になり、「10センチくらい積
もったかなあ」と私が言うと、「もっともっと」と母が答えます。 そんな日は兄と
一緒に自分たちの背丈程ある雪だるまを作り、頭にはバケツを、目や鼻には豆炭、口
は…なんだったかなあ可愛い雪兎も作りました。
 それから、一番楽しかったのは父が作ってくれたソリで遊ぶことです。 独りが後
ろに座り、独りが前で引っ張って走る。 犬ぞりならぬ人間ゾリです。 雪が溶けか
けても雪遊びをしてたので、洗濯機の無い時母は大変だったと思います。 凍り付い
てパリッパリになった洗濯物から垂れた雫がつららのようになっていて、それを触る
のが好きでした。
 懐かしいあの頃のお話しはまだまだあります。 楽しかった幼稚園、遊びすぎて迷
子になったこと、ちょっと怖い炭鉱の病院の話等等。 良い思い出一杯在るあの頃の
話をもう暫く母と楽しもうと思います。

(坂井さん、お母さんとの至福の時が1日でも1時間でも1分でも長く続くことをお祈
りしています。)



        究極の選択

                    和歌浦分会 北口 豊

   三叉路に立ち風向きを読んでいる
   究極の選択神も飛ばす下駄
 人は一生の中でいわゆる「究極の選択」をしなくてはならないことが何度かある。
 恥ずかしながら数十年生きてきた私のその「究極」の選択」について少し触れて見
ます。

 まず、最初のそれは、7歳の時、7人兄弟の末の双子の片割れとして育った私は3
歳の時のはしかが原因で失明していたので、入学が他の兄弟とは違って近所の小学校
ではなく、少し離れた盲学校に行くかどうかということだった。 しかしこれは、選
択というより昨今のようにインクルーシブ教育等が声高に唱えられる時代ではなく、
ごく必然な形で、もちろん子供の自分にはそんな決定権もなく、盲学校を選択して今
に至っている。

 次のそれは、盲学校卒業時のこと。 これと言った進路の当てもなく、身の程もわ
きまえず、漠然と盲学校の理療科教員にでもなれたらという極めて安易な「でもしか
教師」の道を選んだこと。 でも、世間は自分が思うほどそんなに甘くはなく、二度
の受験失敗の末ダメ元で面接を受けた病院に拾ってもらう。

 一方、こんな自分でも何れは小さくても良い自分の治療院が持てたらという淡い希
望もあり、両親の高齢化を理由に東京に出ていた兄に戻ってもらい、二人で両親を見
るべく兎小屋を建て、その一角に小さな治療室を開業することになったのも、ある意
味選択だったかも知れない。
 また、他方では人並みにいつかは自分の家庭も持てたらとも考え、数人の女性とも
交際もした。 そのほとんどははかなく破れた恋が多かったけれど、この人ならと心
に決めた人ともなかなか話しは進まず、そうこうしているうちに別の女性が出現し、
自分なりに悩みもし、先輩の意見も参考にして、結局今の妻とささやかながらも自分
の家庭を持つことができた。 これも人生の「究極の選択」の一つだったろう。

 これには、妻の両親にいくら感謝してもしきれない。 全盲の私に健常者の娘を嫁
がせるというのは筆舌に尽くしがたい決心が必要だったろうと考える。 初めて両親
に会った時は、義父は決して多くを語らず「どれだけ親しい人にでも軽はずみに判を
押さないこと。 賭け事をしないことを守ってくれるなら、娘が望むなら特に反対は
しない」と許してくれた。 これも両親にとっては「究極の選択」だっただろう。 
その時には義母は一言も発しなかったけれど、まず最初に妻の背中を押してくれたの
は義母で、「お父さんにはお母さんから話ししてあげるから、あんたはあんたの好き
なようにしなさい」と言ってくれたのだ。 その私にとってはかけがえのないこの二
人が、ここに来て一緒に生死を左右する病気になってしまった。 義母は悪性リンパ
腫と肺癌と甲状腺癌が見つかり、抗がん剤治療と外科手術でひとまず危機は脱して持
ち前の負けん気でなんとか今は元気でいるものの、義父が軽い認知症から端を発し、
義母の病気でそれが進み、体力も無くなり、ほとんど寝たきり状態になってしまい、
このままではと入院させてみると胃癌が見つかる。 そして、そこで、私達夫婦は最
大の「究極の選択」を迫られることになる。
 長時間を要して、開腹手術をするか、応急処置としての処理をして栄養補給の24
時間の動脈点滴等の延命治療をせずに残りの人生を人間らしく過ごせるようにするか
、つまり、高齢でもあり、リスクを伴う開腹手術は2度の脳梗塞の既往歴もあること
や体力の減退から術後の回復がどれだけ望めるか分からない、だから、癌の腫瘤によ
って閉塞しかけている胃の幽門部にステントグラフト(金網製パイプ)を挿入して食
物の通路だけでも確保して、食べたいものを口から食べられるようにして、たとえ残
りの僅かな時間でも人らしい生活ができる方にするかを選択するよう担当医師から問
いかけられたのである。
 私自身の両親は他界してからすでに30年近くを経ていて、母の闘病時代はこんな
私でも精一杯のことをしたつもりでさほどの悔いは無い。 だから、妻にも「後で後
悔だけはしないようにしてあげて欲しい。 俺のことは自分でなんとかするから看病
に気の済むだけ時間を使え」と常に言っておいた。 私としては、いくら感謝しても
し過ぎることのないこの二人のことだから、せめて苦しまずに1日でも長生きして寿
命を全うして欲しいと願うばかりだ。
 ああ、神様、下駄など飛ばさないで真剣に考えてください。

 (これは、実は昨年の 1月に書いたものですが、その後、 6月に義父は静かに逝き
ました。 お母さん、お父さんの分まで 1日でも長生きしてください。 お父さんど
うもありがとう 合掌。)



        お楽しみ懸賞クイズ

 今回は、また「私は誰でしょう」形式の問題です。 なお、「私」は人間とは限り
ませんぞ。 各問題に答えに関連する幾つかのヒントを上げています。 そのヒント
を参考にお答えください。
 全問正解者には抽選で5名様にささやかな豪華景品をプレゼントします。 また、
寺本さんからご提供いただいたものを特別賞として進呈できたらと考えています。 
奮ってご解答をお寄せください。

 応募について:解答は、書面かメールで、編集者までお寄せください。
 応募先:〒641ー0013 和歌山市内原871ー9 北口 豊
     Eメール owlmail-from-tomtarotan@silver.plala.or.jp
 応募締め切り:平成29年 5月10日(必着)


問 1 ヒント:ジョーカーもハートのエースもあるかな?
       アメリカの万里の長城を作る? TPP離脱宣言。
       第45代アメリカ新大統領

問 2 ヒント:茨城県牛久市出身、本名萩原寛(ゆたか)。
       雲竜型奉納土俵入り  第72代新横綱。

問 3 ヒント:1981年生まれ。 埼玉県深谷市出身。 私の兄弟・姉       
妹は年々増え続け、2012年には年間 4億本も生まれた       よ。生みの親は
赤城しぐれ、育ての親は赤城乳業。        兄弟には、ソーダ味・イチゴサ
ワー・ヨーグルト・蜂       蜜レモンスカッシュ・コーンポタージュ味・シ
チュー       味・ミルクミルク・チョコチョコ・メロンパン味等等    
   数十種類。常温で放置すると変身してシャリシャリ君       に名前が
変わります。 ちなみに妹はガリ子だよ。

問 4 ヒント:私は殻の退化した巻き貝の仲間だよ。 古里は北極や       
南極の冷たい海、日本には流氷に乗ってオホーツク海       を渡って冬にや
ってきます。 だから、人は流氷の天       使とか氷の妖精なんて呼びます
ね。

問 5 ヒント:ビタミンCやカリウムの宝庫。 きよみ・せとか・は       
るみはみんな私の親類です。 たとえば、きよみは温       州蜜柑とオレン
ジの間にできた子で、そのきよみとポ       ンカンの間にできたのが私です
。 日向夏柑と甘夏柑       の間で偶然できたのがはるか。 また、清見タ
ンゴー       ルとアンコールオレンジの間にできた子とマーコット    
   オレンジの間の子がせとか、きよみとポンカンの従兄       弟がはる
みです。 晩柑 3兄弟より有名で沢山出回っ       ているのが私だよ。 こ
の時期、他にもたまみ・ベニ       ハエなんて耳新しい仲間も沢山顔を並べ
ていますね。

問 6 ヒント:私は1993年生まれです。 来園するみんなの投票によ       
って選ばれた和歌山城内に併設する動物園園長です。       毎年冬ごもりを
するとして、地元では知られている雌       のツキノワグマです。

問 7 ヒント:本名は竹村桐子という極めて古風な名前のれっきとし       
た日本人です。
       年齢は1993年 1月29日生まれの24歳。
       東京都出身のモデル、歌手。
       ファッション雑誌の「Zipper」「KERA」[HR]で活躍す       
るモデル。
       ヒット曲に「もんだいガール」、「ファッションモン       
スター」、「原宿いやほい」、「君に100%」、「も       しもし原宿」な
どが有ります。
       実は、フルネームは、きゃろらいんちゃろんぷろっぷ       
……なんですよ。



        編集後記

 今回は、締め切りを過ぎても「あがらの広場」への投稿が少なく困っていました。
 皆さんに無理を言って今号もなんとかそれなりの形になりました。 原稿をお寄せ
いただいた方々、どうもありがとうございました。 また、「お楽しみ懸賞クイズ」
も独断と偏見で今回も掲載させていただきました。 これを作るのもけっこう大変な
んですが、出題を考えるのも案外楽しいものがあります。 いろんなジャンルから出
題したつもりですが、お叱りの声も聞こえてきそうですね…。 皆さんの寛大なお気
持ちでどうかご容赦ください。 そして、ひとりでも多くの方のご解答をお待ちして
います。

 最後に「和視協の28年度を振り返る」でも紹介のあったように、本会の先導者のお
一人でもあった北山豊さんが昨年末にご逝去されました。 私も入会当時より、いろ
いろご指導賜り、現在もこうして執行部の重席を微力ながらなんとか全うさせていた
だけている次第です。 ご遺族の和代さんには謹んでお悔やみを申し上げ、改めて皆
様と共にご冥福をお祈りして編集後記といたします。(編集長 北口 豊)


  和歌山市視覚障害者福祉協会機関誌「白い杖」(通巻第45号)

  発行   平成29年 3月
  発行者  和歌山市視覚障害者福祉協会
  編集責任者  畠中 常男
          電話 073-472-7872
          〒640-8314 和歌山市神前285ー16
          Eメール hatakenaka@jtw.zaq.ne.jp
          和視協のホームページ http://washikyo.org/

  編集スタッフ  畠中 常男   北口 豊    幸前 勇
          坂井 勉    能澤 義和



白い杖INDEXへ トップページへ