和歌山市視覚障害者福祉協会機関誌「白い杖」第46号
和歌山市視覚障害者福祉協会 機関誌「白い杖」第46号 和歌山市視覚障害者福祉協会 平成30年 3月発行 〒640-8314 和歌山市神前285-16 電話 073-472-7872 ホームページ・アドレス http://washikyo.org/ ー 目次 ー 巻頭言 会長 畠中 常男 和視協この1年を振り返る 書記 坂井 勉 平成29年度 和視協女性部行事報告 部長 坂井 法子 あがらの広場 今、思うこと 新光分会 能澤 義和 お酒の話 河西分会 生駒 芳久 「表彰状」 河北分会 南部 照明 ゲンジロウの願い 和歌浦分会 北口 豊 『人生の分岐点とその後の歩みと出会い』 河北分会 栗本 邦男 文芸の広場 川柳 三宅 保州 選 俳句 大倉 義正 選 お楽しみ懸賞クイズ 編集後記 巻頭言 会長 畠中 常男 ことのほか寒さが厳しかった冬も過ぎ、平成30年の春を迎えました。 まず、この1年、皆さんから和視協にいただいたご支援とご協力に対し、執行部一同 、心より感謝申し上げます。 さて、いつもながら同じような文章を書いておりますので、今回は少し変わったス タイルで参ります。 皆さん、和視協の会員の平均年齢は、いったいいくつぐらいだと思いますか? よ く高齢化高齢化と言われますが、私も気になって調べてみたのです。 その結果、 総数 88名 男52名 女36名 平均年齢66.03歳 と言うことでした。 まずは想定内の値ですが、私も僅かに平均年齢を上げております。もっと若い人に 参画してもらって、私などは、早く交代した方がいいのであろうと思いますが、一方 年長の方々が、お元気で現役の会員としてご活躍されていることは、大変喜ばしいこ とだと敬服いたしております。 最近、和視協だけではないのですが、各団体の人数の減少には、本当に心寂しいも のを感じます。 たとえば、和歌山市身体障害者連盟の構成員ですが、かつて500人以上あったので すが、現在300人余りという数になりました。ちなみに、和視協の会員は、平成20年 に110人であったものが、現在88人と減少しています。 なんだかいつもながらの明るくない文章になりそうですので、少し前向きの話題を 。 ご承知のように、平成28年4月に、障害者差別解消法が施行され、和歌山市に置い ても差別解消推進条例が始動しました。 以来、点字版の市報わかやまが分厚くなったり、市から送られてくる封筒に点字が 貼られるようになったり、納税証明や水道料金表などが点字で送られてきたり、少し ずつではありますが、視覚障害者にも暮らしやすい町づくりが試みられているように 思います。ここれは会員の皆さんの総意が、行政や社会を動かしているうれしい証で あると考えます。 と言うことでありますから、数は少なくなっても、歳をとっても、もちろん若い人 も、和視協の旗を掲げて、力を合わせてがんばってまいりましょう。 和視協この1年を振り返る 書記 坂井 勉 平成29年度もあと少しになりました。今年度も色々な出来事がありました。20世紀 は穏やかな時代。21世紀は過激な時代と、数年前にそんな記事を見ましたが、天災は もとより、毎日事件・事故で誰かが死んでいるように思われます。そんな暗い話が多 い中、2018年2月9日から韓国の平昌(ピョンチャン)で冬季オリンピックが開催され ました。皆様ご贔屓の選手の成績はいかがでしたか?実は私はスポーツの祭典や博覧 会大好き人間です。今年の11月には万国博覧会の招致が決定するようですが、是非大 阪に決まって欲しいです。でも2025年といえば私は何歳かな? それを祈りつつ和視協平成29年度の報告を致します。 平成29年度和視協事業報告 平成29年 4月 2日 和視協29年度総会 ふれ愛センター 3階研修室(1) 出席: 42名 委任状: 28通 議長 宮本 美明氏・澤田 留司氏 4月16日 和視協 執行部会・理事会 ふれ愛センター 3階会議室(2) 6月 4日 和視協点字教室 ふれ愛センター 白い杖お楽しみ懸賞クイズ正解者発表 点字数独ゲーム 講師:寺本 津規子氏 参加者26名 7月 2日 和視協第1回教養講座 ふれ愛センター 「ご存じですか?総合事業」 講師:和歌山市福祉局高齢支援課課長 参加者35名 8月20日 和視協第2回執行部会・第2回理事会 ふれ愛センター 9月17日 和視協社会見学 和歌山市駅見学の予定であったが、 台風接近による荒天のため中止 10月 8日 和視協社会見学 文芸大会 和歌山マリーナシティー 参加者 19名 12月 3日 和視協文化研修会 ふれ愛センター 4階大会議室 文芸発表会・表彰式 「ピアのこ」による演奏会 参加者40名 平成30年 1月21日 和視協研修会 ふれ愛センター 「差別解消法、条例後の視覚障害者に対する和歌山市の福祉施策と展望 」 講師:西 障害者支援課長、松下 副課長 参加者27名 2月11日 和視協第2回教養講座 ふれ愛センター 2階会議室(1) 「自転車で世界一周二人旅」体験談 講師:辻 陽平さん、夕佳さん 参加者30名 同 日 和視協第3回執行部会 同所 3月12日 和視協執行部会・第3回理事会 ふれ愛センター 3階会議室(2) 関連団体の事業 平成29年 4月16日 市身連平成29年度代議員会 ふれ愛センター 5月14日 市身連平成29年度社会見学 比叡山(延暦寺)・琵琶湖(ミシガンクルージング) 6月11日 県視協文芸大会「俳句」 田辺市 7月23日 市身連市長杯争奪将棋大会・オセロ(オープン競技)大会 ふれ愛センター 8月 6日 県視協点字講習会 県視聴覚情報センター 8月30日 和歌山市福祉対策協議会 ふれ愛センター 9月10日 第60回和歌山県身体障害者福祉大会 和歌山市民会館 11月 5日 県視協研修会 11月12日 市身連第65回福祉大会及び第 1回教育講座 ふれ愛センター 12月10日 市身連第3回理事会・懇親会 アバローム紀の国 平成30年 1月 9日 知事を囲む懇談会(県自治会館) 2月4〜5日 県身連幹部研修会(白浜町) 2月25日 市身連平成28年度第2回教育講座 神戸どうぶつ王国・白鶴酒造資料館見学 平成29年度表彰者 今年度は以下の方々が表彰を受けられました。 おめでとうございます。 平成29年 9月10日 第60回和歌山県身体障害者福祉大会において 県身連会長表彰 白菊賞 尾家 信子氏 平成29年11月 7日 和歌山市社会福祉大会 会長表彰 団体功労者賞 能澤 義和氏 平成29年11月12日 第65回和歌山市身体障害者連盟福祉大会において 会長表彰 松廣 圭子氏 会長感謝状 松井 三男氏 平成29年12月 3日 平成29年度和歌山市障害者福祉表彰式において 市長表彰 自立更生者賞 西中 利明氏 市長表彰 家族功労者賞 藤岡 和美氏 平成29年12月 6日 第15回紀の国チャレンジド賞 県知事表彰 紀の国チャレンジド賞(自立更生者賞) 坂井 勉氏 会員の動向 平成30年 3月現在 会員数88名 新入会員 家本 健吾氏 平成28年度3月末退会者 楠 義章氏 嶋田 君子氏 谷口 ヒサ子氏 南出 育代氏 山崎 昇平氏 山本 好延氏 平成29年度末退会者 家本 健吾氏 亡くなられた方々 國友 典雄氏 (平成29年5月) 山崎 美智子氏 (平成29年6月) 謹んでお二人の、ご冥福をお祈り申し上げます。 以上ご報告いたします。 平成29年度和視協女性部行事報告 部長 坂井 法子 今年度もみなさまのご協力により、多数の行事をおこなうことができました、あり がとうございました。次年度も一人でも多くの方に参加していただけるような楽しい 企画を考えていきたいとおもいますので、みなさまのご意見ご要望をどしどしお聞か せください。 県視協女性部研修会・総会 日時 平成29年 4月 9日(日) 場所 白浜駅前コミュニティプラザ 参加者 14名 童謡を歌う集い 日時 平成29年 7月 2日(日)午後1時から 場所 海南市保健福祉センター 講師 童謡を歌う集い実行委員会 参加者 10名 体操教室 日時 平成29年 7月23日(日)午後 1時30分から3時30分 場所 ふれ愛センター大会議室 講師 松本 稔代氏 参加者 10名 手芸教室 日時 平成29年 8月27日(日)午後 1時30分から 場所 ふれ愛センター 4階会議室 講師 山崎 由記子氏 内容 和紙を使って封筒づくり 参加者 15名 カラオケ教室 日時 平成29年10月18日(水)午後 1時から 3時 場所 ジャンカラ和歌山駅前店 参加者 7名 講演会 日時 平成29年11月19日(日)午後 1時30分から 3時 場所 ふれ愛センター 4階会議室 演題 楽しく食べよう!食べ方・調理の耳寄り情報 講師 三國 和美氏 参加者 20名 バルーンアート教室 日時 平成29年12月17日(日)午後 1時30分から 3時30分 場所 ふれ愛センター 3階会議室(1) 内容 クリスマスのサンタクロース 講師 松本 真生子氏 参加者 13名 料理教室 日時 平成30年 1月28日(日)午前10時から午後 2時 場所 ふれ愛センター 2階調理室 内容 冬の野菜を使って簡単調理 電子レンジでシュウマイ 白菜のトロトロ煮 他 講師 三國 和美氏 参加者 15名 平成29年度講演会・平成30年度和視協女性部総会 日時 平成30年 3月 4日(日) 午後 1時から 3時30分 場所 ふれ愛センター 2階 会議室(1) 第1部 平成29年度講演会 午後 1時から 2時 演題 「星占いと朗読」 講師 ボランティア・わかやまグループ声 会長 西山 もとこさん他 第2部 平成30年度女性部総会 午後 2時から 3時30分 以上ご報告いたします。 あがらの広場 今、思うこと 新光分会 能澤 義和 折角投稿の機会を頂いたので明るい話をとも思ったのですが、残念ながらまたまた 暗い話になってしまいそうです。 さて、昨年は障害者差別解消法が施行される等、私たち障害者にとっては、ある意 味明るい年だったかもしれません。確かに、最近は白杖を持って街を歩いていても声 を掛けてくれる人が目立ってきましたし、バリアフリーは人々の中に少しずつ浸透し ているようにも思います。しかし、相変わらず障害者や子供たち、いわゆる社会的弱 者への虐待やいじめの問題、ホームからの転落事故等、障害者を取り巻く悲惨な事件 や事故の報道は絶えません。こんなとき、私はいつも一昨年の相模原のあの忌まわし い事件を思い出すのです。今も時々、あの卑劣な犯人のことがテレビや新聞で取り上 げられますが、事件に対する彼からの反省の弁は全く聞かれません。それどころか、 未だに 「社会に迷惑をかける障害者はいらない!」とか、「経済的に負担をかけ る障害者なんかは世の中にいない方がいい!」等と、個人の尊厳や人権を無視した全 く勝手なことを言っているようです。同一視するのは間違っているかもしれませんが 、ニュースで伝えられるトランプ大統領の発言に何か似てはいないでしょうか。アメ リカファースト、つまりアメリカ第一主義と言うのが彼の合言葉。日本でもこれにあ やかってか、○○ファーストと言って知事になった人もいます。 でもこれは、よくよく考えると、自分さえよければいい、他人はどうでもいいとい う、唯我独尊、自己中心主義の考えにつながらないでしょうか。世界的にもこのよう な主義主徴をする政治家や指導者が段々増えてきているようにも思われます。ナチス の時代ではあるまいしとは思うのですが、新自由主義が台頭する今日を象徴している かのようです。 グローバルが追及される今の時代に逆向するような、こうした問題が私たちの周り にも忍び寄ってはいないでしょうか。最近、個人主義の考え方を持つ人が増えている ように思います。先の犯人の考えに同調するネット上の声も多いと窺います。恐ろし いことです。バリアフリーとかユニバーサルデザインとか、そんな悠長な話ではあり ません。障害者が街を歩くのも怖いような、そんな世の中になるのではと不安を感じ ているのは私だけではないと思います。マクロ経済は高調であるとはいえ、経済的格 差が拡大し、貧困層が増す今日、平気で人を殺傷する物騒で悲惨な事件も日常的に起 こっていますし、生きる目標を失い自暴自棄になる人も多いようです。 そうした時代の今こそ、私たち弱い立場にある障害者同志が何をすべきかについて 、もう一度立ち止まって知恵を出し合って考える時期ではないでしょうか。一人ひと りは弱くても、皆が手を携え協力し合ってまとまれば大きな力になります。明るく皆 が暮らし易い理想的な社会の実現を目指して行動していくことが大切ではないでしょ うか。 今の私たちの身近な問題では、あはき法19条と、介護保険制度に於ける鍼灸師の参 入の問題が喫緊の課題となっています。これについては色々是非論はあると思います が、将来に控える我々の後輩のためにもこれらの問題は避けては通れない課題だと思 います。 今後よりよい議論の場ができることを念願してやみません。 ありがとうございました。 お酒の話 河西分会 生駒 芳久 わたしはお酒が好きです。 今では、毎晩晩酌をします。私は、缶ビールと焼酎派です。もちろん仕事で当直の 時は飲みません。必然的に、休肝日というわけです。 でも、もともとお酒が飲めたとか、体質的に向いているというわけではありません でした。 思いだしますと、19歳か、20歳の時、始めてお酒を飲みました。 仲間と一緒に飲むのですが、どれだけ飲めるとか、飲めばいいのかわかりませんか ら、一生懸命飲みました。ニッカウイスキーの「レッド」でした。確かひとビン500 円だったと思います。それを半分くらい飲みました。酔いつぶれて眠ってしまいまし たが、あくる日が大変でした。手足にじんましんが出て、皮膚がめくれてしまいまし た。 皮膚科のお医者さんに行くと、「アルコール性アレルギーです」と言われました。 わたしは「一生、お酒は飲めないのですか?」と思わず聴きました。不思議とその時 のお医者さんの答えは憶えていません。わたしは、今後お酒が飲めるか飲めないかが 大変な問題と感じたのでした。 わたしの父親は、お酒が好きで毎晩晩酌をしました。お酒なら何でものみましたが 、自分でもどぶろくを作りました。わたしは何度も作り方を見ていましたから、今で も作れと言われれば作れるような気がします。 当時は、なんでも家で作りました。梅干し、漬物、みそ、しょうゆ、餅、餅せんべ いなど、なんでもです。子供たちは、それを作るのを見ていますし、手伝わされます ので覚えるわけです。戦後間もなくの生活と言うものは、そういうものでした。 その後、たった60-70年ですが生活様式はずいぶん変わりました。 他の人もそうですが、私自身も変わりました。 でも、わたしは内心思っていることがあります。それは、「100年や1000年で人間 は変わるものではない」という思いです。人間の歴史は、500万年以上はあると思う のですが、その長さに比べると文化の歴史はごく短いものです。生体の成り立ちは、 ちょっとやそっとでわかるわけがありません。遺伝子工学は、ずいぶん進歩しました が、それでも全ての成り立ちのどれほどに当たるか予想さえできないくらいの奥深さ です。 あれこれ言ってきましたが、本題の「お酒」からはとんでもなく離れてしまいまし た。 「わたしはお酒が好きです」と、一言で言えるものを遠回りしました。どうもすみ ませんでした。 「表彰状」 河北分会 南部 照明 私は子供の頃から身体は丈夫で、78歳の今まで入院したのはトータル70数日です。 そんな私が最初に表彰されたのは小学部5年生の時の皆勤賞でした。それ以後は年に3 日休んだために精勤賞などそんな表彰ばかりで、専攻科卒業の時に感謝状を貰いまし た。 徳島県立盲学校では、図書を借りて日点から本を借りてそれを点写したわけで、そ の功労が認められたわけです。成績の良い生徒は優秀賞を貰っていましたが、残念な がら縁が無く、私のクラスは成績優秀な生徒ばかりで競争が激しく、80点でも取ろう ものなら下の方で、盲学校のクラスに19人もの生徒がいて、2クラスに分かれ、私も みんなに負けないほど勉強したつもりですが、いかんせん、他の人の頭が良すぎて落 ちこぼれで終わりました。 社会人になって役員を30年ほどやったので沢山表彰して貰いました。役員をしてき て思ったのは、計画した事業に会員の参加が多いとやり甲斐があり嬉しいものでした 。だから、役員の人のご苦労が私なりに理解しているので、和視協に入ってからよほ どのことが無い限り、ほとんど出席していました。それが認められて5年ほど前だっ たと思いますが、感謝状を頂きました。和歌山へ来てからもう一つの感謝状は前の「 白い杖」でも触れた老人ホームへの治療奉仕を11年続けて市民会館で表彰して貰いま した。今年度も休まず行事に出席できそうです。それもこれも北口副会長が私の希望 を聞いてくれて、「ドングリ」の川柳教室と研修会を同じ日にしてくれたからです。 連盟の福祉大会には「センターたより」で500人出席とあったが、ヘルパーさんによ ると、地元の参加が少ないと言っていました。今年度は日盲連の全国大会が徳島で会 ったので、後輩と話をしようと出かけました。ところがなんと運が悪いことに、私の 乗るはずの船がドック入りで、8時半の船に乗ったため、当然遅れてしまい、議事が 始まっていて当初の目的が果たせませんでした。席に着いてみると、和歌山県の参加 者は二人だけというお恥ずかしいものでした。こんな風に人生を振り返ってみるに、 なんの取り柄もなく、平凡に生きてきた気がします。果たして幕引きはどうなること やら。「白い杖」に出すネタが無くなってきたので他の会員の作品を期待します。 最後に表彰状で思い出すのは、大相撲の千秋楽で優勝力士に外国人が「ヒョウショ ウジョウ!」と独特の言い回しで手渡していたのを思い出します。 今は相撲を全然聴いていないのでどんな様子か知りません。 ゲンジロウの願い 和歌浦分会 北口 豊 「約束を果たせず消えた命の灯」 「不死鳥も命乞いする大津波」 「絶つ前に母の笑顔を思い出せ」 「鯨でも蟻でも命一つだけ」 「愛命より重いのか自爆テロ」 僕はゴールデンハムスターのゲンジロウです。今は和歌山市の南の外れのとあるウ サギ小屋みたいな家の子供として厄介になっています。ハムスターの僕が「ウサギ小 屋」とは父さんのいささか不満げな顔が見えるようです(ニコニコ)。 そもそも僕が何故ゲンジロウという名前になったのかはっきり憶えてないけれど、 たしか僕がここに来た頃に、NHKの大河ドラマの「真田丸」にはまっていた父さん が、勢いで付けた名前みたいなんです。でも、僕はとてもこの名前が気に入っていま す。 今は体重も124グラムになり、父さんの両手にスッポリ包まれるのにちょうど良い 具合になったけれど、ここに来た頃は体重48グラムで、不安で不安で毎日ビクビクし ていました。ちょっとしたことが怖くて、自分のケージの中を隠れる場所を探して走 り回っていたものです。でも、1週間を過ぎる頃には少し慣れてきて、父さんが掌に 載せてくれたひまわりの種も怖々ですが少しずつ食べられるようになり、両前足をそ の掌に乗せられるようになって、その掌がとても居心地良く怖くないことが分かって からは後ろ足も乗せて安心してくつろげるようになりました。でも、そうなるまでと いうか、互いにわかり合えるまでちょっと時間がかかったんです。 まだ僕がいろんなことに怖がっていた頃、時々父さんはケージの外からひまわりの 種とかチーズクッキーやチーズパフパフなどのおやつをくれるんだけど、母さんなら 直ぐに僕の目の前に持ってきてくれるのに、父さんは僕の居ないあさっての方に持っ て行くことがあって、そんな時には母さんが「ゲンちゃんはそっちにいてへんよ、も うちょっと右、そこから15センチほど上に蝉みたいな格好でへばりついてるよ」なん て父さんに教えるんです。そんなことが何度かあって、僕は気付いたんだ、父さんは 全く目が見えないということに。だから、それが分かってから、父さんがご飯をくれ ようとしているときには僕の方から走り寄ることに決めたんだ。 昼は父さんの仕事の患者さんとの話し声や、なにやら聴き取れない父さんのパソコ ンの読み上げる声を子守歌にして、居眠りしたりスヤスヤ爆睡したりしてるけど、夜 になって、母さんがテレビのバラエティーや2時間ドラマに熱中する頃には起き出し て、ご飯を食べたり回し車で運動不足を解消するんだ。気が向いたら外にも連れ出し てくれて、父さんの肩や頭に登ったり、父さんと母さんのベッドで走り回ったりさせ てもらうよ。 また、母さんがケージの掃除をするときは、掃除が終わるまで父さんが両手に包ん で遊んでくれるんだ。 母さんは僕が爆睡してるときに、「あっ、ゲンちゃん死んでる」とか言って、背中 をツンツンつつくんだ。それで楽しい夢の最中に起こされて振り返って母さんの顔を 見ると「その姿が可愛い」というけれど、眠りを妨げられた僕は、えらい迷惑だ。ま た、力任せに僕をつかみ、僕が4本の足をばたつかせたらそれを見てまた喜ぶんだ。 でも父さんは、優しく掌で包んでくれて頭や背中をそっと撫でてくれるよ。 もう一つのケージには、僕の3分の1もない小柄で真っ白なおてんばなジャンガリア ンハムスターのコユキちゃんもいるけど、僕には彼女とゆっくり話しもさせてくれな いんだ。 子供のいない父さんと母さんには僕たち2人が子供の代わりをしてるんだ。時には 夫婦喧嘩の仲直りまでさせることもあるんだよ。 僕のケージには、以前にここで暮らしていた先輩たちの匂いが微かに残っているよ 。だから、ペペ・ジン・モモ・ポコ・ミミなんて前の子供たちの名前と呼び違えられ たりすることもしばしばなんだ。それは仕方ないだろうね、父さんは7人兄弟だった から、父さんのお母さんもよく呼び違えたと言うし、父さんももう還暦を遥かに過ぎ ているからね。 なにやら人間様の世界では、しがらみや権力保持、奥深い過去の遺恨・思想や宗教 とやらの、僕には全く理解できないことなどが複雑に絡み合って、いつ1発の爆弾で 、この素晴らしい星、地球全体を滅ぼしてしまうかも知れないほどの戦争を始めよう かとしているような恐ろしいニュースがテレビから聞こえてくる。母さんはあんまり 真剣には考えてないようだし、もしもの時には自由に逃げることもできるだろうけれ ど、僕は目の見えない父さんがとても心配なんだ。常に父さんは「大地震や水害など の自然災害で命を落とすのなら運命だとあきらめもつくけれど、ちっぽけな人間達の いがみ合いや見得の張り合いからの下らない戦争のとばっちりなんかで死にたくない 」と言ってる。 僕らの寿命は2年ほどだけど、僕たちも二人の家族の一員として父さんと母さんの 支えになれたらと思って毎日頑張ってる。もう少し長生きして二人の毎日を楽しくさ せられたらといつも思うんだ。100年に1度の大地震が来るとか、一瞬にして平和な暮 らしが破壊されてしまうような見にくい戦争が少なくても父さんや母さんの元気なう ちにだけは起こらないように、絶対絶対無いように。 パチパチ、おじぎ・合掌。 『人生の分岐点とその後の歩みと出会い』 河北分会 栗本 邦男 河北分会の栗本邦男でございます。 いつもお世話になりありがとうございます。 今回急な事ではありますが、北口さんから原稿依頼のお誘いがあり、北口さんには 大恩がございますので、お引き受けさせて頂きました。 「何か課題を頂けませんか」と言いますと、「栗本さんは中途失明だから『見えて る世界と全盲になられた時の思い』を語って頂ければ」と、いう事でございました。 なかなか難しいお題を頂き、頭を抱え込みました。 与えられた課題とは少し違うかもしれませんが、『自分の思い』お伝えが出来るか自 信はございませんが、不十分ながら、今の思いを語らせて頂きます。 さかのぼること、それは西暦2000年。誕生月の6月。私が丁度50歳・妻が45才の時 でした。 6月の週末 左目に異変を感じ、月曜日に日赤病院を受診しました。 医師がいきなり「栗本さん、もう左目は諦めて下さい。失明です。」と言われまし た。 少しはまだ見えておりましたので「えっ、まだ見えています」と言いましたら、「 今の医学では治せない病気の一つです。3・4日後には完全に見えなくなるでしょう」 。 その通り、やはり4日後には左目の視力を失いました。 そして右目に関しては、「何故だか分からないけど、不思議だけれども」と医師は 言いつつ、「病気の進行が遅れているようです。何とかこの進行を止める緊急手術を 今から行います」と言って、緊急手術に入りました。 余りの事に頭が真っ白になりました。 手術の後、「5年持ってくれたらな」と、医師のつぶやきが聞こえました。 です が、お陰様で幸いにも7年持ってくれました。本当にありがたい思いでございます。 そして7年後に、やはり訪れました。 一月・二月と、徐々に真綿で首を絞められるという表現がございますが、その言葉 通り、徐々に視力が落ちて行き、見えなくなっていくのであります。 日々・月々と見えなくなって、それは坂道を転がるようでした。 本当に泥沼の中で、もがき苦しむこと約3年。 平成22年の秋。 「運の無い人生や。 なんでこんな目に合うんやろ。 すまんな〜こんなんと結婚したばっかりに苦労かけて、お前は何かええ事あったか? 」妻に言いました、妻は、「あったよう、お父さんと手をつないで一緒に歩ける事。 ほんまに幸せやわ〜」思ってもなかった言葉が返ってきました。 私は不覚にも何も言えずに、妻の言葉を聞いていました。 妻の愛情に支えられて、還暦を過ぎた頃には、心が少し上向きになっておりました 。 今年で68歳になります。今のように全盲になったのが、6年前です。 そんな時、和視協にご縁を頂き入会させて頂きました。 そして北口さんにSTT卓球クラブの入会にお誘いを頂きました。 運動音痴の私ではございますが、素直に入会させて頂きました。 卓球クラブは、本当に素晴らしい方々の集まりでございました。運動音痴の私は、 なかなか球を打ち返すことが出来ません。そんな私を『栗本さんルール』と言って、 皆様が温かく包み込むように接して下さいました。 耳も少し悪くて補聴器をつけて卓球を楽しませて頂いております。 本当に、慈愛と優しさと思いやりのある、皆様の仲間に入れさせて頂きました。 そしてこれも北口さんに「俳句・川柳も脳トレになるよ」と『俳句・川柳のサーク ル』にも入会させて頂きました。 そして、『俳句・川柳』でも素晴らしい方々との出会いです。 私は『俳句・川柳』は初めての経験で、皆様の作られる素晴らしい句にいつも、感 動しながら・うなずきながら「素晴らしいな」と感嘆させて頂いております。 そして昨年度は点字教室に挑戦させて頂き、寺本先生・矢田先生のもとで始めさせ て頂きましたが、「とても私の能力ではついて行けない・触読なんてとても出来ない な」と気付きました。それをさらりとやってられる皆様に感動致しました。 人生の高い・高い壁を越えられて来られた方々の、慈愛に満ちて、そして思いやり ・優しさにあふれた方々との集まりは、今までの人生において体験したことがないも のばかりでした。 皆様本当にありがとうございます。 今、振り返れば、2000年 誕生月の6月。人生の後半への分岐点。 こんな分かり やすい分岐点はございません。 そして医師も驚く右目は、5年という所を7年近く残して頂きました。 これはまさに神様が私に、分岐点からの道・今までと全く違った道を歩ませて頂い て、生かさせて頂いております。 妻と私の、両親4人は天国へ旅立っておりますが、それぞれのご先祖様のご加護に 見守られて、今私は、その道を生かされ、歩まさせて頂いております。 そして、こういう沢山の素晴らしい出会いを頂いており、本当に今 私は、幸せの 道を歩ませて頂いております。 皆様と、こうして出会えた幸せに本当に感謝申し上げます。 つたないお話ではございましたが最後までお読み頂きありがとうございました。 皆様方のご家族様のご健康、そしてお幸せを祈念させて頂きながら、ここで終わら せて頂きます。 今後もご指導のほどよろしくお願い申し上げます。感謝 文芸の広場 本会には俳句を楽しむ「若竹」と川柳で頑張っている「ドングリ」の二つの文芸サ ークルがあり、13名の人達が句作で脳トレをしています。 以下に29年度中に俳句の大倉 義正、川柳の三宅 保州のお二人の先生から好評価を 頂いた文芸大会と各月に通信指導を受けている句集の中から句を紹介します。 皆さんも当サークルに入って脳の活性化にチャレンジしてみませんか。我こそはと 思う方は北口まで。 川柳 三宅 保州選 課題 「忙しい」 忙しい後ろ姿を子は見てる (照明) 蛍の光聞き慌てだす踵 (途夢太郎) 多忙でも犬の散歩は欠かせない (武司) 課題 「秋」 かぐや姫降りてきそうな今日の月 (途夢太郎) 稲刈りの藁の匂いに母の顔 (章雄) あきあかね稲穂の向こう僕がいた (志津子) 課題 「味」 味のある友の言葉に励まされ (道) 薄味で成人病を予防する (良和) おふくろの味を家内に求めても (章雄) 課題 「運」 何事も弱気になると運逃げる (良和) 運命と今日も白杖ともにして (章雄) 人生は塞翁が馬前を向け (途夢太郎) 課題 「ふるさと」 ふるさとの方言聞いて話しかけ (良和) ふるさとを返してほしい放射能 (孝雄) ふるさとがテレビドラマで活気づき (照明) 課題 「薬」 両親をこの世に呼べる薬欲し (敦子) 新薬と幹細胞に明日を見る (志津子) 置き薬紙風船を待っていた (孝雄) 課題 「橋」 河の名残地名に橋がそこかしこ (南部 照明) 遠回りしても渡ろう歩道橋 (宮地 良和) 石橋を叩き実った綿帽子 (笹川 武司) 俳句 大倉 義正選 タンデムを親子で漕ぐや若葉風 (丸山 孝雄) 足裏に点字ブロックうららけし (北口 豊) 照らされて綿菓子のごと夜の桜 (宮地 良和) 点字読む間近に蛍火を点す (丸山 孝雄) 釣竿を慌てて仕舞ふ日雷 (北口 豊) ドア開けば冷気吐き出す冷房車 (市川 和郎) かなかなや晩酌はもうお湯割りに (丸山 孝雄) 盆をどり見よう見まねで輪に入れり (宮地 良和) 踊りの輪抜けて語らふ友の居て (北山 和代) 稚児の列釣瓶落しに急かされて (北口 豊) 実り田を渡りて聞こゆ笛太鼓 (栗本 邦男) 子供らの出店に集ふ秋祭 (宮地 良和) 菊にほふ曾孫はしやぐ婆の通夜 (宮本 員代) 細波に夕日輝く秋の海 (笹川 武司) 秋の海群れなす鳥の影映し (宮地 良和) お楽しみ懸賞クイズ 今回は、少し趣向を変えてみました。各問の後に三つの選択肢を上げ、正しいと思 う番号を選び、最後にその数字を全部合計したものが正解となります。ただ、合計が たまたま同じ数字になることも考えられますので各問題の選択肢が正しい人を優先し ます。 全問正解者には抽選で5名様にささやかな豪華景品をプレゼントします。 奮ってご解答をお寄せください。 応募について:解答は、書面かメールで編集者までお寄せください。 応募先:〒641ー0013 和歌山市内原871ー9 北口 豊 Eメール owlmail-from-tomtarotan@silver.plala.or.jp 応募締め切り:平成30年5月10日(必着) 次の各問題の答えの番号を選び、最後にその選んだ番号の数字の合計したものをお送 りください。 解答例 問(ア) 3 問(イ) 1 問(ウ) 1 問(エ) 2なら、 3+1+1+2で答えは7となります。 問 (ア) ブラジルの首都はどこ? 1. ブラジリア 2. リオネジャデイロ 3. リオデジャネイロ 問 (イ) 主に鼻をかんだり、赤ちゃんのお尻を拭いたりするのに使う 柔らかい紙は何? 1. ピッシュペーパー 2. ティッシュペーパー 3. サランラップ 問 (ウ) 歌手 森 昌子のヒット曲は? 1. 越冬燕 2. 列島燕 3. 決闘燕 問 (エ) 童謡・唱歌「あめふり」で、かあさんが迎えに来てくれたのは? 1. 番傘 2. ベンツ 3. じゃのめ 問 (オ) 東北高校から日本ハムファイターズに入団し後にメジャーリーグでも活 躍し たプロ野球選手は? 1. ダブリッシュ 2. ダルビッシュ 3. ダルブッシュ 問 (カ) 「あかりをつけましょぼんぼりに、お花をあげましょ桃の花」で始まる 童謡 のタイトルは? 1. うれしいひなまつり 2. たのしいひなまつり 3. やさしいひなまつり 問 (キ) 歌手、橋 幸夫のデビュー曲とされているのは? 1. 「霧氷」 2. 「恋するメキシカン・ロック」 3. 「潮来笠」 問 (ク) 和歌山県出身で無いタレントは? 1 .山田 花子 2. 岡本 玲 3. 小林 稔侍 問 (ケ) 以前は「盲人の時間」という番組名だったラジオNHK第2放送の現在 の番 組名は? 1. 視覚障害者の皆さんへ 2. ハートネットブラインドラジオ 3. 視覚障害ナビラジオ 問 (コ) 今年3月末に終わるNHKテレビ朝の連続ドラマのタイトルは? 1. 「まってんか」 2. 「わろてんか」 3. 「やめてんか」 問 (サ) この機関誌「白い杖」は通巻何号? 1. 44号 2. 45号 3. 46号 問 (シ) 今年の「大学選抜入試センター試験の問題で、あるアニメの主人公が出 題さ れました。その主人公は? 1. ムーミン 2. アンパンマン 3. ドラえもん 編集後記 年明け後、記録的な寒波の襲来による各地の雪害や灯油の高騰など、大変な冬でし たが、ここに来てやっと春の足音が近付いてきたようです。 さて、毎回本機関誌の編集について苦労するのですが、今回は1月の後半になって も原稿の寄りが悪く、皆さんに無理を言ってなんとかある程度の形になりました。ご 協力頂いた皆さんどうもありがとうございました、紙面を拝借して御礼申し上げます 。 会長の巻頭言にもありましたように、会員は高齢化と数の減少が顕著であります。 皆さんも知り合いの視覚障害者に声かけをして頂き、一人でも多く入会してもらって 、本会に新風を吹き込んで頂けたらと願いつつ、編集後記といたします。 北口 豊 和歌山市視覚障害者福祉協会 機関誌「白い杖」(通巻第46号) 発行 平成30年3月吉日 発行者 和歌山市視覚障害者福祉協会 編集責任者 畠中 常男 電話 073-472ー7872 〒640-8314 和歌山市神前285ー16 Eメール tsuneo@hatakenaka285.sakura.ne.jp ホームページ http://washikyo.org 編集スタッフ 畠中 常男 北口 豊 幸前 勇 坂井 勉 能澤 義和 |