和歌山市視覚障害者福祉協会機関誌「白い杖」第48号
〓 巻頭言 会長 畠中 常男 まず、この1年、皆さんから和視協にいただいたご支援とご協力に対し、役員一同、心から感謝申し上げます。 さて、令和の時代を迎え、初めての春を迎えました。昨年度の巻頭言では、平成の時代を振り返り、 @ネット社会の広がり A相次ぐ大きな災害 B経済の停滞と価値観の多様化などを挙げ、概して停滞と人間関係が希薄になった時期であったが、来るべき令和の時代は、穏やかで人間味のある、夢多き時代であってほしいと書きました。 この1年を振り返れば、台風やそれに伴う洪水等の自然災害をはじめ、心が痛む暗い事柄もありましたが、コンビニの営業時間や派遣労働の見直し、就職氷河期の人たちの救済、また、幼児教育や大学生に対する助成など、人を大切にする考え方が、わずかずつではありますが社会の底流に生まれつつあるように思われます。 とはいえ、行き先が不透明なこの時代、私たち視覚障害者を取り巻く環境は、決して穏やかなものではありません。がっちりスクラムを組んで、希望をもって、この令和の時代を、みんなで楽しみつつ生き抜きましょう。 〓 和視協この1年 書記 寺本 津規子 和視協会員の皆様こんにちは、皆様にいろいろ助けていただき書記2年目を終わることができました。ありがとうございました。 この1年、和視協の行事に参加して、一つ一つの行事を盛り上げてくださった会員の皆様と関係者のご協力に心より感謝申し上げます。 以下にこの1年間に行われた主な行事についてその概要を記します。 和視協の行事 4月7日(日)13:00 平成31年度定期総会 ふれ愛センター3階研修室(1) 来賓 和歌山市副市長 森井 均氏 和歌山市議会議長 松井 紀博氏 和歌山市 福祉局 社会福祉部 障害者支援課 課長 西 喜彦氏 副課長 松下 行男氏 祝電 和歌山市社会福祉協議会 会長 森田 昌伸氏 全会員 95名 出席 42名 委任状 32通 合計 74名 議長団 和歌浦分会 西中利明氏 新光分会 能澤義和氏 4月21日 11:30〜執行部会・13:30〜 理事会 ふれ愛センター 2階会議室(1) 6月2日 13:30〜 点字教室 ふれ愛センター2階会議室(1) 第1部:機関紙「白い杖」のクイズ発表 第2部:「書いてみよう、触ってみよう楽しく学ぶ点字教室」 参加者:20名 7月7日 13:30〜 第1回教養講座 ふれ愛センター4階会議室 「見えなくても楽しめるゲーム」 講師:和視協有志 参加者22名 8月25日 11:30〜 第2回執行部会 13:30〜 理事会 ふれ愛センター3階会議室(1) 9月15日 社会見学・文芸大会 福祉バスにてみさき公園行き 参加者:34名 10月13日 13:30〜 福祉学習会 ふれ愛センター 3階 研修室(2) 「盲ろう重複障害者を取り巻く現状とその活動と支援制度について」 講師 和歌山盲ろう者友の会事務局 瀬戸 節子 氏 参加者:32名 12月 1日 13:30〜 文化研修会・文芸発表会 ふれ愛センター4階大会議室 第1部:文芸大会作品発表と表象 第2部:和視協 歌の祭典 参加者:43名 令和2年1月12日 13:30〜 研修会 ふれ愛センター 3階 研修室(2) 「和歌山市におけるいろいろなゴミの収集とその利用のしかた」 講師 和歌山市 市民環境局 環境部 一般廃棄物課 総務企画班 班長 田又 ゆかり氏 福森 佳子氏 参加者 29名 2月9日 10:00〜 第3回執行部会 ふれ愛センター2階 会議室(1) 13:30〜 第2回教養講座 ふれ愛センター2階 会議室(1) 「スマホで生活を豊かに」参加者16名 3月15日 第3回理事会 ふれ愛センター4階会議室 13:30〜 令和元年度表彰者 9月8日 県身連会長表彰 礎賞 坂井勉さん 11月17日 市身連会長表彰 山崎浩敬さん 会長感謝状 生駒芳久さん 12月6日 紀の国チャレンジド賞 知事感謝状 更生援護功労者 松下淳二さん 12月7日 和歌山市障害者福祉表彰 市長表彰 自立更生者賞 中村純治さん 12月14日 第13回塙保己一賞 大賞 生駒芳久さん 令和2年2月17日 厚生労働大臣 自立厚生者表彰 幸前勇さん 受賞されたみなさん、どうもおめでとうございます。 会員の動向 令和2年3月現在 会員数 96名 新入会者 山東 智也さん 新光分会 西岡 孝洋さん 和歌浦分会 水内 寛子さん 新光分会 宮地 真由美さん 河西分会 谷口 恵美子さん 東和分会 退会者 吉本 雅秀さん 河北分会 亡くなられた方 栗本 邦男さん 河北分会 令和元年10月12日 謹んで栗本さんのご冥福をお祈り申し上げます。 女性部の行事 平成31年4月14日 県女性部総会・研修会へ参加 田辺市文化交流センター 6月9日 13:00 女性部 童謡を歌う集い 海南市保健福祉センター 6月23日 13:30〜 カラオケ教室 ふれ愛センター 4階大会議室 7月14日 午前10時〜14時 料理教室1 ふれ愛センター 2階調理室 講師 三國和美氏 冷麺 ホットプレートを使用して、季節の焼き野菜、ムース 9月1日 13:00 バルーンアート教室 ふれ愛センター 4階会議室 講師 松本 真生子氏 「お月見ウサギ」 11月10日 13:00 手芸教室と家事工夫研修交流会 ふれ愛センター 3階研修室(2) 講師 山崎由記子氏 第1部 脳トレ折り紙「ヒヤシンス」第2部 家事工夫研修会 12月15 午前10時〜14時 料理教室2 ふれ愛 センター 2階調理室 講師 三國和美氏 ホットプレートパエリヤ 電子レンジで煮込みハンバーグ他 令和2年1月26日 13:30 手芸教室 ふれ愛センター 1階 会議室 講師 山崎由記子氏 ブローチづくり 3月8日 講演会 和歌山グルーブ声13:00 総会 14:00 ふれ愛センター 関連団体の行事 4月14日 県視協 女性部総会 田辺市 4月21日 市身連 代議員会 ふれ愛センター 4月28日 県視協 第1回部会委員会 和歌山ビッグ愛 5月12日 市身連 社会見学 太地町立くじらの博物館他 5月17日 県身連 理事会 和歌山ビッグ愛 5月21日〜23日 日本身体障害者福祉大会 秋田県 5月24日 市身連 第1回理事会 ふれ愛センター 5月26日 和歌山市相談員研修会 ふれ愛センター 5月26〜28日 全国盲人福祉大会 札幌市 6月1日 県身連 評議員会 和歌山ビッグ愛 6月9日 県視協 文芸大会 和歌山ビッグ愛 6月10日 和歌山県障害者社会参加推進協議会 和歌山ビッグ愛 7月21日 市身連 将棋大会・オセロ大会 ふれ愛センター 8月2日 市身連 第2回理事会 ふれ愛センター 8月4日 県視協 無免許無資格撲滅キャンペーン JR和歌山駅前 8月4日 県視協 点字啓発セミナー 和歌山ビッグ愛 8月28日 市身連 福祉対策協議会 ふれ愛センター 9月2日 障害者雇用支援月間街頭キャンペーン JR和歌山駅前 9月 8日 和歌山県身体障害者福祉大会 上富田町 10月8日 和歌山県との話合い 和歌山県自治会館 10月27日 県視協 研修会 ふれ愛センター 11月13日 和歌山市社会福祉大会 和歌山市民会館 11月17日 市身連 第67回福祉大会及び第1回教育講座 ふれ愛センター 12月3日 障害者週間街頭キャンペーン JR和歌山駅前・南海和歌山市駅前 12月 8日 市身連 第3回理事会・懇親会 アバローム紀の国 令和2年1月6日 市身連 市長への新年のあいさつ 市役所 1月10日 県身連 知事を囲む福祉懇談会 和歌山県自治会館 2月2日〜3日 県身連 幹部研修会 白浜町 2月22日 点字図書館 県視協 交流サロン 新型肺炎の感染拡大を懸念し、中止 2月23日 市身連 第2回教育講座 新型肺炎の感染拡大を懸念し、中止 3月25日 市身連 第4回理事会 ふれ愛センター 来年度も、皆様方のご参加とご協力をよろしくお願いいたします。 ありがとうございました。 〓 「あがらの広場」 ここでは、会員の皆様から頂いたエッセイや日頃思うことについての作品をご紹介します。 〓 施設での生活 東和分会 北山 和代 私が施設暮らしを始めたのは、今から約7年半前のことです。当時、足腰が弱くなり、一人歩きが精一杯でした。 リハビリに通っていましたが、ふと今の施設の施設長に知り合い、デイサービスに来ないかと誘われ、「送り迎えはするから」との言葉に入れてもらいました。 ここの施設長はもはや3人目です。 出来て間もない施設にデイサービスに通っているうちに「うちに入居しないか」主人と二人なら入れてもらうと言って入れてもらうことになりました。 お部屋は独り1室、完成して3ヶ月、どこでも空いているから選んでくれと言われ、便利なエレベーターの前を二部屋選び、入ることになりました。新しいから奇麗だし、便利だし、当時主人と隣通しでした。 来てみれば、がらがら、みんな良い人ばかりで毎日が楽しく良かったなあと思ったものでした。 施設長が替わり、7年半の月日が過ぎてしまいました。 3年前に主人も亡くなり、もう古株の1人です。 全室24室24名の高齢者が20数名の職員に介護してもらっています。 外から通ってくるデイサービスを受けている人が数名、約30名ほどが毎日楽しく介護を受けています。 最近、私も足腰が悪くなり、今では車椅子生活になってしまいました。施設内では杖1本で歩けるのですが、外に出ることは出来ません。視力も落ちてきたから車椅子を操作できないのです。でも今は福祉のお陰で、ガイドヘルパーも使える同行援護で、日曜日など買い物等遊び回れる。 和視協などへの参加もできるし、けっこう楽しんでいます。 むしろ他の高齢者達です。「あなたはいいねえ、どこにでも行けて、私たちは家族が来ないと外には出て行けない。そうそう家族も来れないからどこにも行けないし、買い物もできないのよ」と嘆いています。そんな時、家族なんて在ったって自由にならないのだなと思い、独りぽっちをあきらめています。 やはり他人の集まりで生活してるんですから、思うようにも行かず寂しいことも多々あります。 最近、私も足腰がずっと弱り、視力も落ちてきているので、1日中ベッドで暮らす日も増えてきました。介護者が有っても出て行く気にはなれないのです。お誘いがあってもその気にはなれなく、つい欠席してしまうのです。もう身体が付いてこないといった状態です。福祉のためにみんなのためにと頑張ってくれている役員さん達には悪いと思いながらついお休みしてしまうのです。みんな待ってくれているのだなと思いながらもベッド生活になってしまうんです。 後三つで90歳、90の声を聞くとこのようなものでしょうか。施設生活をしていると、老化が早いんでしょうか。そんなことを考えながら元気が出ないんです。 友達もだんだん無くなっていきます。もっと友達を作って励まし合い助け合いつつ、気持ちではそう思うんですが、現実になるとそうも行かないのです。頑張ろう。 最近難聴も出てきたようで、どこの会場へ行っても聞き取りにくいんです。施設で若い職員達の言ってることも聞きにくく、困っているのです。耳鼻科にも行っているのですが、補聴器まではと言われ、定期的に通っています。 このように、悪くなりかけたらあちこちに出てくるのです。やがてベッド生活になってしまいそうだからそれを恐れリハビリに励もうと心を決め、頑張ります。皆さんよろしくお願いします。 〓 かぜぐすり 東和分会 岡崎 泉 「いってらっしゃい」と、夫を会社におくりだして、コーヒーをポコポコポコと入れて飲むのが、私の日課の始まりなのです。コーヒーをドリップしている時、とてもいい香りがして、私はそれが大好きなのです。 ところが、11月初旬に風邪をひいてしまって、においがわからないようになってしまいました。鼻水・鼻づまりに咳もひどく、夜中に何度もおきてしまう。医者からもらった薬を5日分しっかり飲んだけれど、すっきりしないのです。だから、再び病院へいきました。「漢方薬と咳止めの水薬を処方しますね。」ということで、薬局へいきますと、「岡崎さん、水薬5cc計れるかな」と薬剤師さんがきいてきた。この薬剤師さんは、以前から知り合いで、私の目のことを気にしてくれていたのだ。たしかに、それは直径1センチ位の小さなキャップに薬を入れるのは、難しい。「ちょっと無理かな。」と答えると、「空のボトルを3つあげるから、ご主人に1日分ずつ計ってもらっておけばいいよ」と言ってくれましたので、そうすることにしました。 帰宅してその水薬のボトルをあけた主人が言いました。「このボトルの先は細くなっているし、一押しすれば1回分出るよ。」と教えてくれる。「そう、そうだったのか」と心の中で思いました。目が、みえにくくなって初めてのことで、とまどうことも多いですが、自分なりに工夫して出来ないと思っていたことも少しずつ克服して、色々なことをのりこえていかなければいけないと思う今日この頃です。 〓 [続ける心、負けない心] 和歌浦分会 奥野 幸子 毎日[今日も生かされています。生きています]と仏さまに手を合わせ般若心経を上げ生きていることに[ありがとう]です。 人生なるようにしからならないと思いつつも五年前の緑内障の手術で中心視野が欠損し見えていた目が真っ暗になった日のことは忘れられません。中途失明の怖さ悔しさ、再び文字の読み書きに出会った嬉しさは将来忘れません。 組織の強い力には勝てず日赤和歌山医療センターは、[合併症]と言って詰めてきますが、私には、そんなことよりいきなり真っ暗になった相手の気持ちを考え、思いやりのある心に寄り添うことはできないのだろうか?と悔しいです。 さて、私も住み馴れた家に戻って一年。 たくさんの人に支えられ、助けて頂きながらの生活です。 ありがたいことに目は変わりませんが日頃の生活の中で手さぐりで物を捜すとき、神様が持たせてくれるのか真っ暗の中で何か見えたり、勘が働きます。生きている喜びです。 今年の上富田町の県大会において視覚障害者の代表の方も提案して下さっていましたが中途失明、弱視者の努力していることや経験談も聞きたいし、中途からでも一人で公道に出られたらと願っています。歩行指導の方のお話なども聞いてみたいです。 また、今年のNHK障害者福祉賞の方は、山崎かずえさんでした。西日本の水害に合われた真備町の人です。自身は全盲で主人は健常者、私達の市や町でも防災について強く語られています。しかし、自分の命は自分で守るというのも勿論です。台風や大雨になると、ハザードマップという言葉をよく聞きます。 さわって分かる。読み上げられ聞けるのがあればいいと言われていました。 視覚障害者を助ける仕組みとして(災害時の対応) 1、トイレの場所の誘導 2、一人一人に細かな支援の対応 3、障害者を助けるしくみ 4、避難所に相互インフォメーションを設けてほしい、など体験したことを書かれています。南海トラフが近いと言われていることも考えなければと思いました。 10月頃にJR和歌山駅の見学陳上とお便りで知りましたが、JRはとても親切ですよ。私は年に二回程新宮に行きます。 特急くろしおの乗り降りやタクシーまでの誘導もして頂き有りがたいです。マンネリの行動よりも、これから育っていく子供たちに[白い杖]のことや盲導犬のことを知ってもらうことに取り組むことが大事ではと思います。 先日も和歌山放送(12月24日)で近鉄百貨店特設スタジオにライトハウスから盲導犬が来ていました。やはり見ることで子供や周りのみんなに啓発して知ってもらうことが大切だと思う。放送の中で名手小学校四年生の皆さんに白杖と盲導犬の授業をライトハウスの人がされたそうで、白杖も初めて見たりさわったりする子も多く、白杖の役割や意味が分かりとてもすばらしい感想を述べていました。 子供たちの感想は、白杖を持っている人が立ち止まって考えているようなら、[何か手伝うことはありませんか] と声をかける。また、信号待ちをしている人には、対面の信号の色を[青だよ]と言う。 など学校訪問などで視覚障害者の気持ちや考えを丁寧に伝えると子供たちも素直な心で理解し、協力してくれるのです。 小さなことでも、まず行動してみることだと思います。 〓 たった1度 東和分解 寺本 津規子 愛鷹の峰はるか 富士仰ぎ香貫の山や 千本の継承めぐる駅北に 生まれいでたるわが沼盲 これは、私が義務教育を過ごした母校の賛歌の1番である。創立20周年の時に、金田一京助作詞の校歌が作られ、沼盲賛歌は歌われなくなったが、私には賛歌のほうがなじみ深い。 遠足に行った香貫山、冬になると体感訓練と称してせんぼん浜の防波堤でマラソンをした。小学部1年生も先生の立っている、Uターン地点まで一人で防波堤を走らなければならないのだ。孤独な小さな胸は、不安で不安でたまらなかった。給食を食べ、毎日の掃除の時間が終わり、雑巾バケツをかたずけながら、洗い場の窓の景色を眺めて先生がしみじみと「富士山がきれいだなー」と、時折つぶやく。よく晴れた日には、校舎の北側の窓から白く雪をかぶった富士山がくっきりと見えるのだ。 JR沼津駅の北口を出て徒歩5分。10年ぶりに降り立った駅は以前とは違い明るく広々としていて、何となく面影のある道を、それでも不安げにМと歩いて、母校にたどり着いた。 創立70周年の節目に静岡県立沼津盲学校同窓会は、解散式をすることを決めて、多くの同窓生が集まった。小学生の頃遊んでもらったお兄さんお姉さん方の懐かしい声に、ひとときこどもの頃に戻った。そしてその日に合わせて学年同窓会をすることにして、10年ぶりに、私たちは顔を合わせた。 同窓会解散後に作られた有志の一泊交流会に行く人たちを見送り、中学部を卒業するときには6人だったうちの3人と恩師の学年同窓会は、居酒屋で5時間しゃべりつくした。その夜は、朝から熱海で待ち合わせたMと、再び熱海で一泊し、翌日は神奈川県 の平塚のグループホームに暮らす、今回同窓会に参加できなかったTと、3人で平塚駅で食事をし、3時間ほどを過ごした。 私には、S君のお母さんに忘れられない思い出がある。それは小学校2年生のとき、その日は土曜日で、寄宿舎の同じ部屋の子たちはみんな帰省したが、私は迎えに来てもらえず一人部屋に残った。通学していたS君を迎えに来た、彼のお父さんが明日朝 から迎えに来るから家においでと言ってくれて、日曜日、お昼ご飯に出前のチャーハンをいただき、広いおうちをあっちにこっちに、2段ベットに乗ってはしゃいだりと、朝から夕方まで遊ばせてもらった思い出は、いつも心の奥底から離れない。 今回お酒を飲みながらその話になったとき、S君のお母さんは、現在90を過ぎ少し認知症もあるそうだが、私たちのことを覚えていて時折話すそうだ。S君は、「たった1回しただけなのに、さも何回もしたかのようにおふくろは話す」と言った。その時私は胸を打たれた。たった1度のS君のご両親の暖かな行為は、これほどに心の奥に響いていたのだと。10年ぶりの再会を楽しみにしていた二日間はあっという間に終わった。 〓 文芸の広場 文化部長 北口 豊 本会には俳句を楽しむ「若竹」と川柳で頑張っている「ドングリ」の二つの文芸サークルがあり、令和2年2月現在、両方合わせて12名の人達が句作で脳トレをしています。 活動は三宅保州先生(川柳)、大倉義正先生(俳句)のお二方を講師に、会員は俳句が奇数月、川柳が偶数月に、代表の北口まで、毎回定められた兼題で投句し、講師の方々は健常者であるため、点字での投句は解読できないので、北口が1句ずつパソコンの辞書機能を駆使して活字の投句集を作成し、講師宅に郵送。それを検討して、添削や指導のコメントを作成していただいたものを再度北口まで返信して頂き、それを各会員宛に点字の投句集(指導書)に点訳・印刷して郵送するという形式を取っています。 なお、会員にはパソコンを扱える人もいるのでそんな人たちには句集をメール配信しています。 ということで、基本的には上記のような通信制の活動ですが、年に1度だけ直接講師を囲んでの句会を開いて直に先生のご指導を仰いでいます。 以下に昨年度中に選者の大倉義正(俳句)・三宅保州(川柳)のお二人の先生から好評価を頂いたサークル員の句と、年1度の本会主催の「文芸大会」の優秀句を紹介します。 皆さんも文芸部に入って一緒に脳の活性化にチャレンジしてみませんか。 俳句の部 選者 大倉 義正先生 鍵かっこ内は兼題です。 春風に髪靡かせつ美容院(北山和代) 手を伸ばし藤棚の藤引き寄せる(北山和代) 空梅雨に少しは降れと空を見る(市川和郎) 六段の調べ茶会や蓮の花(北口豊) 一枚を脱ぎ捨て午後の暑さかな(北山和代) 紫陽花や傘さしかけて車椅子(丸山孝雄) 七夕の孫の短冊そっと読み(宮地良和) 中空に三匹泳ぐ鯉幟(市川和郎) 花の声聴きたくて来る白い杖(北口豊) 音訳の読書聴き入る夜長かな(北口豊) スパナから鉛筆に換え夜学正(丸山孝雄) ビー玉のごとき種無し葡萄かな(市川和郎) 秋近しつくつくぼうし声を聞き(北山和代) 退院の父さんだけに土瓶蒸し(丸山孝雄 「松茸」」) 松茸を買ってく人に目を見張り(南部照明 「松茸」) 国産の松茸高しよその国(西中利明 「松茸」) 川柳の部 講師 三宅 保州先生 ※鍵かっこ内は兼題。 走ったら梅干しの種カタコトと(孝雄 「梅干し」) 蜂蜜で梅本来の味が消え(照明 「梅干し」) 梅干しの皺に苦労がしみている(途夢太郎 「梅干し」) 生きてきた歴史が指の節にある(章夫 「指」) 後ろ指指されぬように心がけ(敦美 「指」) 格好いい靴で外反母趾になり(照明 「指」) 駅伝の応援みかん剥きながら(幸子 「指」) 生活は令和になるも変わりなし(良和 「元号」) 大正の父の拳骨良く効いた(孝雄 「元号」) 令和には令和の風が吹くだろう(途夢太郎 「元号」) 懐に天狗の団扇持ってます(途夢太郎 「団扇」) 母さんがあおいでくれた昼寝どき(文夫「団扇」) 扇子もち三部開いて口隠す(良和「団扇」) 破れても戦いきったさわやかさ(良和 「さわやか」) 爽やかな虫の音色に耳が立つ(武司「さわやか」)) 応対で笑みも聞こえる電話口(途夢太郎 「さわやか」) 十二月頭の中で大掃除(志津子 「12月」) 木枯らしもジングルベルも押す背中(途夢太郎 「12月」) この日だけケーキ囲んでクリスチャン(良和 「12月」) 手をつなぎ妻と歩いた遊園地(愛和 「遊園地」) 二人には景色は要らぬ観覧車(章雄 「遊園地」) 百円ショップは私の遊園地(幸子 「遊園地」) 〓 お楽しみ懸賞クイズ 今回は、独りでも多くの方にご参加頂けるよう、私たちに身近な問題にしてみました。 全問正解者5名様(正解者多数の場合は6月の点字教室の会場にて抽選の上決定)に、ささやかな豪華景品を差し上げます。奮って解答をお寄せください。 ※応募方法:お名前、問題番号と答えを明記して、必ず文章にして、メールか書面で5月10日(日曜)までにお寄せください。 応募先 〒641ー0013 和歌山市内原871ー9 北口豊 eメール owlmail-from-tomtarotan@silver.plala.or.jp なお、メールで送っていただいた方は、お手数ですがその旨を電話でご連絡ください。 問1 和視協の活動の拠点である、和歌山市ふれ愛センターの最寄りのバス停名は? 問2 和歌山市役所の所在地は和歌山市?町名のみ) 問3 このほど完成する和歌山市新市民会館の名称は 問4 「市報和歌山」令和2年4月号は第何号? 問5 和視協会歌に出てくる「虎伏すの城」というのは? 〓 編集後記 元号が「令和」になって最初の「白い杖」の発行となりました。「和視協この1年」にもその詳細が記載されていますが、退会された方入会された方、若干の入れ替わりがありますが、無事にこの機関誌を発行することができました。原稿をお寄せいただいた方々に紙面をお借りして御礼申し上げます。 来る新年度も本会活動にさらなるご支援とご協力をお願いして編集後記といたします。 (編集者) 和歌山市視覚障害者福祉協会機関誌「白い杖」(通巻第47号) 発 行 令和2年 3月 発 行 者 和歌山市視覚障害者福祉協会 編集責任者 畠中 常男 電話 073-472-7872 〒640-8314 和歌山市神前285ー16 Eメール hatakenaka@jtw.zaq.ne.jp 和視協のホームページ http://washikyo.org/ 編集スタッフ 畠中 常男 北口 豊 幸前 勇 寺本 津規子 松下 淳二 |