白い杖 第27号


和歌山市視覚障害者福祉協会機関誌「白い杖」

>



 巻頭言
   会長 山嵜景生
 平成十一年度を迎え、花便りが聞かれる季節になりました。
 会員の皆様いかがお過ごしでしょうか。昨年は経済企画庁の発表によりますと、企業の倒産一万六千件、失業者数二九五万人と、戦後の混乱期を除いては最も景気の悪い一年でした。
 和歌山市はどうだったでしょうか。七月には毒入りカレー事件の発生。十一月には市長の不祥事で五十日も市長不在という散々な年でした。「災い転じて福と成す」のことわざのように今年度は安心して暮らせる日本になることを期待したいものです。こんな中、私たちの福祉がせめて後退することのないよう関心をもって注目しなければならないと思います。
 さて、会長に就任して一年、皆様のご支援ご協力のおかげで大過なく努められたことに対し、感謝いたします。今年度は地に足をつけ、腰を落ち着けて本会の運営にあたりたいと考えております。会員の皆様の変わらぬご支援ご協力をお願い申し上げると共にご健勝とご多幸を祈念して巻頭言といたします。

和視協平成十年度事業実施報告
   書記 滝本金作
会議
執行部会 四回。理事会 三回。
市連盟理事会 四回。同代議員会 一回。
連絡 文書十回。電話 数回。その他 若干。
四月  五日 定期総会、県総合福祉会館四F       大会議室、九年度の事業及び決       算の承認、十年度の事業計画と       予算案の承認、役員改選など重       要案件を処理。新執行部に会長       山嵜景生・副会長宮本克二・北       口豊・会計柏原善一各氏が就任       する。
   十九日 第一回理事会、滝本金作氏が書       記に就任。
  二十六日 市身連代議員会、市ふれ愛セン       ター、新年度の事業計画の具体       化の決議と新役員の選出。
六月 十四日 福祉学習会、市ふれ愛センター、
       四十五名出席、日常生活用具の
       交付について、保健薬局と薬袋
       への点字表示について、福祉バ
       スカードの使用法について学習
       する。
七月  五日 市身連将棋大会、市ふれ愛セン       ター、和視協より六名参加。団       体の部で優勝する。
   十九日 点字競技会、市ふれ愛センター、       二十五名出席、め書きリレー、       連想書き、三文字尻取り書きの       三種目で競い合う。
八月二十三日 県盲協点字競技会、田辺市市民       総合センター、六名出席、日盲       連主催の全国大会の予選を兼ね       て写し書き、聞き書き、速読み       の三競技と、ボランティア等を       対象にめ書きなどで競い合い、       河北分会山崎芳子さんが優勝。
九月 十三日 市身連理事会、市ふれ愛センタ       ー、各部会から要望事項を持ち       寄り、市側と交渉を持つ。本会       からは次の三点の検討を市側に       要望した。
       一 ガイドヘルパーの利用範囲        の拡大と手続きの簡素化につ        いて
       二 デイ・サービス事業の盲人        ワープロ教室における使用機        器及びワープロソフトの改善        について
       三 路上点字ブロック上の自転        車等の放置物件に対する市民        への理解啓蒙について
十月 十一日 県盲協主催俳句大会、有田郡広       川町町民会館、十二名参加。作       句を楽しむ。
   十一日 市身連第一回教育講座、市ふれ       愛センター、会員十三名出席、       「ふれあいを通して」の講演を       聞く。
  二十五日 社会見学および文芸研修会、和       歌山市四季の郷、会員およびボ       ランティアの四十五名出席、作       句とみかん狩。
十一月十五日 県盲協主催中失者緊急生活訓練、       県総合福祉会館、十五名出席。
  二十九日 文化研修会、県総合福祉会館四       F大会議室、会員五十名出席、       クイズ大会、文芸研修での投句       の優秀作品の表彰と総評、カラ       オケ大会の三部に分けて楽しい       一時を過ごす。
一月 十七日 更生相談員会および幹部研修会、       市ふれ愛センター、盲学校山本       先生の「ダニについて」の講演       を聞く。
二月 十四日 市身連第二回教育講座、市ふれ       愛センター、会員二十名出席、       「人生のロマン」の講演を聞く。

消息
 本年中、次の方々が各方面より表彰を受けられました。おめでとうございます。
 五月十日、和歌山市長表彰の自立更生に弘親分会の沢田留司さん、同内助功労に河北分会の河野敦美さんが受賞されました。(市役所ロビー)
 八月三十日、和歌山県知事感謝状の援護功労に新光分会の山嵜景生さんが、県知事賞の内助功労に東和分会の宮本美枝子さんが受賞されました。(勝浦町)
 十月二十七日、和歌山市社会福祉大会、市社協会長表彰の社会福祉功労に河西分会の国友典雄さんが授賞されました。(和歌山市民会館)

婦人部だより
   婦人部長 北山和代
 和視協婦人部では平成十年度に次のような事業または活動等を行って参りました。
 盲婦人の地位向上のため、そして一般社会人として恥ずかしくないよう生活訓練や各種研修会を行い、皆さん熱心に受講されました。生け花、茶道、料理、講演会、また野外研修会、そしてボランティアの協力にてピクニックなどと視野を広め親睦を深めてきました。和気あいあいとした中、それぞれ受講されています。和視協の女性会員の方で、まだ婦人部に属されていない方々お誘い合わせの上一度婦人部をのぞいて見ませんか。部長他三名の役員それに三名の連絡係と部員全員がそろってお待ち申し上げています。今、次年度の事業の計画中です。賛助会員、ボランティア等の協力を得ながらより良い婦人部にして行きたいと思っています。

会員コーナー
話題に思う
   河西分会 寺下一夫
 この頃、点毎で山陽鉄道の無人駅についての投書がよく指に触れる。確かに無人駅は我々盲人にとって色々な面で不都合な存在である。無くしてもらいたいとは当然の要求だと思う。なぜ、それができないのか。言うまでもなく人件費など会社の懐具合が唯一最大の原因である。マイカーの増加を始めエスカレートする車社会は鉄道企業を圧迫し、中でも短距離のローカル線ともなれば影響は大きいと言われている。いささかはばかりある言い方だがこんな経営状態の中でひとにぎりの盲人のために多額の出費をしぶる企業側の気持ちも分かろうというところである。「一人の為の福祉」と言うのが福祉社会構築の基本的モラルであるし、それが分かっていても出来ないのが人間の弱みなのである。企業が利害を無視しては成り立たないのである。早い話、国でさえ財政の逼迫で「福祉とて聖域ではない」と言い出したではないか。如何に正当な福祉の要求であっても「地獄の沙汰も金次第」と言われる世の中である。いわんや障害者と言えども苦しさにかまけてかりそめにも、脱線した要求は禁物である。かつて落語の笑福亭八鶴師匠が「一人で電車汽車を利用できる人が障害者やからゆうて運賃半額にせえいうのは、たとえ距離制限があったかて筋違いやおまへんか」と言われたことがある。これはその一例だが不合理とまでは行かなくても現実の人間社会をあまりにも無視した権利要求は大いに慎まねばならない。神や仏なら笑って聞いてくれるだろうが、人間相手だから予想以上に強い反発も招きかねない。たとえ当然の要求であっても一歩退いた謙虚さが二歩も三歩も進んだ結果をもたらすのである。企業が如何に利益追求の団体であるにしてもこう言った姿勢での要求を続けていけばいつかはその人間としての善意良識に目覚め無人駅解消の端緒を導き出せるものと信じて疑わない次第である。

健康について
   新光分会 畠中常男
 健康食品・健康雑誌・健康法・健康グッズ、「健康」という言葉が街にあふれています。でも、健康って響きの良い、耳に当りの良い言葉ですね。では、いったい健康の定義となると、ちょっと難しくなります。「病気じゃないから健康」「今日も仕事やってるから健康」なんて単純に考えてしまいそうです。そこで、今話題の静かなるベストセラーズ、三省堂の新明解国語辞典を紐解きますと「肉体的精神的に異常がなく、日常の社会的生活や積極的な行動に耐えうる、体の状態」とあります。これで納得ともいえそうですが、あまりにも絵に描いた餅のようで、いささか腑に落ちません。
たとえば私の場合、最近髪の方も薄くなってきたようですし、歯にも若干問題があるし、足腰の方にもあまり自信がありません。そこで私は、健康と言う言葉の定義をこう考えることにしました。気象庁ではありませんが、「平年並みに、まずまずの満足度で、日常生活に耐えうる、精神的・肉体的状態」。さて、冒頭でも申したとおり、巷に健康と言う言葉があふれ、現代人のもっとも関心の深い事柄が、これまた健康。
テレビや、他のマスコミから送出されるその情報たるや膨大です。そこで、どうしてもそういった情報に触れる機会があるわけですが、その内容に唖然とします。「○○を飲むと癌にならない」「○○は体に良い」や、禁煙せよ、減塩せよ、ダイオキシンが心配、給食の食器が心配等々、限りがありません。毎日そう言った事ばかり考えていると、かえって気を病んでしまいます。もっと気楽に、肩の力をぬいて、あるがままに、気の向くままに、生きて行きたいと思うこのごろです。

私とパソコン
   東和分会 井辺光治
 私は二十二歳の時に交通事故で両眼を失明したので、盲学校で点字を教えてもらって三療を学びました。点字を練習して読み書きができる様になって来ると、言葉を思い浮かべた時にも墨字より点字が頭に浮かぶくらいになり、目がみえなくなった私にとって点字は唯一の文字であると共に、盲人どうしの連絡や記録手段として、なくてはならない文字になっていました。しかし一般的には一部の人を除いては何の関心もない文字なので、点字を使っていても、今まで覚えた墨字はなるべく忘れない様にしなければと思っていました。その頃晴眼者の間では、パソコンやワープロを使う人が増え始めていましたが、目の見えない私が使えるとは夢にも思っていませんでした。今から十五年前に不動産の賃貸業をしていた父が急死したので、その後は母が引き継いで帳簿を付けたり領収書を書いたりしてくれていました。時々母が留守の時に賃貸料を支払いに来てくれたお客様から、(息子さんやったらあかんな)と言われて用件を済まさずに帰られてしまいました。目が見えないだけなのに、すべてを否定された様で悔しい思いをしましたが、私では領収書もかけないので、やはり母がいる時に来てもらうより仕方がないと言う事になりました。しかしこんな事では母も留守にもなれないので、なにか良い方法がないかなと困っていたところ、全盲の友人からパソコンを音声で使っていると聞き、これを使えば私にも帳簿付けや領収書を書くぐらいの事はできるんじゃないかと思って、さっそく購入して挑戦する事にしました。その友人に教えてもらいながら使い始めましたが、当時のパソコンは現在の物とは比べ物にならないくらい貧弱で、キーボードを叩いても音声が出なかったり、市販のソフトは使えなかったり、漢字も使えませんでした。唯一自分で打ち込んだゲームのソフトなどで遊びに使えるだけで実用的には使えない状態でした。しかし、最近は機器の発達や、音声ソフトの充実により実用的に使える様になり、今まで母がしていた事務はすべて私にもできる様になりました。
 私がパソコンを使い始めて何よりも良かったと思う事は、書くのをあきらめていた墨字の漢字が書ける様になった事で、近所の人達へメモや伝言を渡せたり、領収書や色々な書類を書いて渡し、お客様から認められた事です。宛名書きをしたり、家計簿やつきあい帳、住所録などを記録したりして、家族内においても貢献できる様になった事も良かったですし、やっと社会復帰ができたかなと感じました。

クイズコーナー
 「問題」 次のア〜オに関係する数字の合計     をお答え下さい。
 ア、短歌の標準構成文字数。
 イ、南紀熊野体験博の開催期間は何日間か。
 ウ、春選抜高校野球の出場校数は。
 エ、和歌山市における市会議員の定数。
 オ、機関誌「白い杖」の発刊回数。
申込先  〒六四〇―八四八三 和歌山市園部一二一五の四
     宮本 克二
締め切り 平成十一年五月二十三日
発表  景品の発送をもってお知らせします。

編集後記
 編集部
 和歌山市視覚障害者福祉協会機関誌「白い杖(二十七号)」を発刊出来ましたことは大変うれしく思います。
 会員コーナーにお寄せ頂きました原稿も昨年に引き続き、内容も興味深いものとなりました。編集担当者としても大変喜んでおります。又、クイズにつきましては、昨年同様、皆様方が気楽に参加して頂けるものとしました。
 これからも、皆様方にご愛読して頂く機関誌にして行きたいと思います。
 最後に、この機関誌発行に当たり、ご協力くださいました方々に心より感謝申し上げます。

 入会のおすすめ
 本会は、和歌山市内に居住、身体障害者手帳をお持ちの視覚障害者なら、どなたでも入会していただける団体です。県盲人協会を通じて日本盲人会連合につらなり、市身体障害者連盟を通じて県身体障害者連盟に属しています。私達、視覚障害者の福祉を高めるには何と言っても組織の強化が必要です。その一つの策は、会員を増すことです。力が足りないため思うことの大部分は絵に描いた餅に終わっているのが現状です。未加入の方は、知友とおさそい合わせになってお入り下さい。
手続きは至極簡単。入会の意志を会長あて申し込んで頂くだけで結構です。詳しいことは、その時連絡いたします。

☆事務所 〒六四〇―八三一九  和歌山市手平三丁目十番八号
     山嵜 景生
 電話  二四局 八五九〇




白い杖INDEXへ トップページへ